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第82回 2023年度共通テスト分析・②読解の基本を問う国語の問題

 前回は、共通テストは思考力や応用力を問う新傾向型の問題が注目されているけれども、
実際には従来のセンター試験を踏襲した基礎力を問う問題が4割近くを占めていること、新傾向型の問題と言っても基本事項の理解を前提としているので、受験生としてはまずその徹底を図るべきことについてお話しました。新高3生の皆さんは、1学期の間に各科目の基礎を固めるという意識で、学習に取り組んでいただけたらと思います。
 さて、今回からは、今年(2023年度)共通テストで出題された問題を見ながら、傾向を詳しく分析していきましょう。まず取り上げるのは、従来型の問題です。センター試験を踏襲していると言うが、具体的にはどのようなことか? また、必要な基礎力とは何か? といったことを、実際の問題を通じて理解してください。
 次に挙げるのは、国語の第1問(評論)の文章と問題の一部です。

〈例題〉
 子規の書斎は、ガラス障子によるプロセニアム(舞台と客席を区切るが額縁上の部分)つくられたのであり、それは外界を二次元に変えるスクリーンでありフレームとなったのである。Bガラス障子は「視覚装置」だといえる。

問3 傍線部B「ガラス障子は『視覚装置』だといえる。」とあるが、筆者がそのように述べる理由として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ガラス障子は、季節の移ろいをガラスに映すことで、隔てられた外界を室内に投影して見る楽しみを喚起する仕掛けだと考えられるから。
② ガラス障子は、室外に広がる風景の範囲を定めることで、外の世界を平面化されたイメージとして映し出す仕掛けだと考えられるから。
③ ガラス障子は、外の世界と室内とを切り離したり接続したりすることで、視界に入る風景を制御する仕掛けだと考えられるから。
④ ガラス障子は、視界に制約を設けて風景をフレームに収めることで、新たな風景の解釈を可能にする仕掛けだと考えられるから。
⑤ ガラス障子は、風景を額縁上に区切って絵画に見立てることで、その風景を鑑賞するための空間へと室内を変化させる仕掛けだと考えられるから。

 傍線部Bの一文は、前の一文を受けていますね。要するに、プロセニアムとしてのガラス障子は、外界を二次元に変えるスクリーンでありフレームとであるから、「視覚装置」だといえるわけです。選択肢を見ると、②は「風景の範囲を定める」が「フレーム」、「平面化された」が「二次元に変える」、「イメージとして映し出す」が「スクリーン」に対応しており、ズバリ正解と判定できます。
 センター試験の評論でも、傍線部の前後の読みを中心に問題が用意されていました。それは、文と文をつなぎ合わせることで小さなまとまり(段落)が形成され、それをまたつないでいくことで文章となるからです。一文一文の意味が理解できずして、文章全体の内容が分かるはずがありません。つまり、文章読解の基礎となる、文と文のつながりを、センター試験は問い続け、共通テストもそれを踏襲しているのです。
 本問で、基礎力を問うということの意味が、ある程度お分かりいただけたかと思います。次回も基礎力を重視する従来型の問題を見ていきましょう。

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第81回 2023年度共通テスト分析・①従来型と新傾向型

 今回からは、主に受験学年を迎える新高3生の皆さんを対象として、今年度の共通テストにどのような傾向が見られ、どのように学習を進めていけば良いのかについてお話していきたいと思います。
 共通テストも3年目となり、出題の方向性もだいぶ明確になってきました。また、昨年の秋には、2025年度以降に新設される「公共」や「情報」、また、新たに出題に加わる国語(現代文)の実用文の試作問題も、大学入試センターから発表されています。来年度の共通テストには直接関係がありませんが、大学入試センターの方針を知るうえで重要な情報ですので、大枠は知っておくべきです。
 さて、真っ先に受験生となる皆さんにお伝えしたいのは、「共通テストには旧来のセンター試験を踏襲した問題が多数出題されている」ということです。一昨年(2021)に共通テストが始まった際には、思考力や判断力を問うということで、センター試験との違いが強調されました。また、開始に先だって2017年・2018年に行われた試行調査では、これまで見られなかった新傾向の問題が用意され、関係者に衝撃を与えました。
 しかし、いざ蓋を開けてみると、完全に違う問題になったというのではなく、センター試験と変わらぬ問題も出題されたのです。
 ここで、共通テストの問題を類型化すると、次の2つに分けられます。

1-従来型:センター試験を踏襲した問題(基礎力重視)
2-新傾向型:文章や資料を用いた問題(思考力重視)

 従来のセンター試験は、文系・理系を問わず各科目で必要最小限(ミニマム)の学力を問うという点で、よく出来ていました。そこに、新学習指導要領がうたう「思考力・判断力・表現力」を問う問題を加えたいというのが、共通テストの趣旨です。ですから、一次試験としての役割を担う共通テストには、基本事項を問う従来型の問題も多く含まれています。
 共通テスト初年度の2021年度は、従来型6割・新傾向型4割くらいの配分でした。それが、年々新傾向型の問題が増加し、今年は従来型4割・新傾向型6割と逆転していました。試作問題を見る限り、大学入試センターとしては、新傾向型の比率を7割くらいにしたい意向なのだと思います。
 しかし、基礎力を重視した従来型の問題がなくなるということは考えられません。また、思考力を重視した新傾向型の問題においても、当然、各科目における基本事項の理解が前提となっています。
 その意味で、共通テスト攻略のために何よりも大切なのは、「基本事項の徹底」と言えるでしょう。新高3生の皆さんには、夏を迎える前に各科目の基礎をきちんと固めておいてほしいところです。
 次回からは、実際に出題された問題を見ながら傾向を分析していきます。

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第80回 入試期間中の心構え・③「to do リスト」は5分でできるようにする!

 前回は、「新しいものには手を出さない」ということについてお話しました。入試本番が直前まで迫っていますので、あれもやらなければ・これもやらなければと「不安」になる気持ちも分かりますが、これまで使い慣れたもので「自信」を深める道を選んでください。
 さて、今回は、入試が続く中でどのようにして「to do リスト」をこなしていくか、というお話をしたいと思います。当然のことながら、夏休みや1学期・2学期中のように、大きな目標を立てて、時間をかけてじっくりこなしていくようなことはできません。それどころか、そのように大きく計画を立てると、かえって何もできない無力感が残るばかりです。
 しかし、時間がないからと言って、何もできないということではありません。直前期、そして、入試期間中というのは、今まで以上に集中力が高まっている時期でもあります。やり方しだいでできることはいくらでもあります。ですから、入試期間中に合った「to do リスト」を作ってほしいのです。
 それは、5分くらいのスキマ時間でこなせるような「to do リスト」にする、ということです。食事が終わった後の5分、電車の移動中の5分、そうしたわずかな時間でできるように、リストを作成しましょう。
 たとえば、英語で「仮定法を見直す」というのは無理ですが、もっと範囲を限定して、「仮定法過去完了のテキスト2ページ分」ならば、5分で確認できるはずです。そのように、目標をピンポイントに定めることが、時間の有効利用につながります。
 では、そのような目標を、どのようにして定めるのが良いのでしょうか? それは、直近の試験をもとに考えてください。前々回の記事でお話したように、問題の答え合わせをするのは時間の無駄です。しかし、あの単語が分からなかったとか、この部分の文法理解があやふやだったとか、そのような感触は残っていると思います。それを放置するのは良くありません。そこで、帰宅後や次の日のスキマ時間を利用して、確実に補強していくのです。
 ここで、「近代哲学の父」と呼ばれるルネ・デカルトの言葉を紹介しましょう。「困難は分割せよ」です。デカルトは、理性を正しく働かせ、真理に到達するために、検討すべき課題をできる限り小さく分割するべきだと考えました。大きな山のままだと圧倒されてしまいますが、小さな山にすれば思いのほかできるものです。できることを一つでも積み重ねて、合格をたぐり寄せてください。応援しています。

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第79回 入試期間中の心構え・②新しいものには手を出さない!

 前回は、入試期間中の心構えとして、「問題の答え合わせをしない」ということについてお話しました。分からなかった問題を調べたところで、次の試験にはまったくつながりません。切り替えて、合格可能性を少しでも高めるための努力をしてください。
 さて、今回も入試期間中にしてはいけないことをお話します。それは、「新しいものに手を出すこと」です。
12月から1月にかけて、「○○もやった方がよいですか」という質問を多く受けます。新しい参考書や問題集に着手したいという相談です。こうした質問に対する答えは決まっています。「これまで使ってきたものを完成させることを優先しなさい」です。
 入試期間中は、すべての範囲が終わっていることを前提に、苦手な分野や固めきれていない単元を補強していくことが中心になります。ですから、まずは自分に足りないことは何かを把握することが先決です。当然、これまで使ってきた参考書やノート・プリントをひととおり見返す必要があります。見直しには十分に時間を取ってかまいません。それ自体が勉強になります。
 そのうえで、具体的にやるべきことは、これまで使ってきた参考書やノート・プリントの徹底的な復習です。それなしに新しいものに手をつけても、ほとんど効果はありません。
 そもそも、直前期に新しい参考書や問題集に手を出すのは、リスクが伴います。第一に、それが自分に合ったレベル・内容であるのかが分かりません。第二に、内容の確認のためこれまで使ってきた参考書を見返そうとしても、単元などが対応していなければ手間がかかります。直前期に新しいものを始めても、効率が良くないのです。
 それでも、タイトルに「○○時間完成」「短期集中」などとあると魅力に感じます。しかし、直前期に特化した参考書や問題集というのは、全ての範囲が仕上がっているということを前提としています。それだけやれば得点力がアップするものでもないのです。
 また、購入したのに手をつけていなかったものなどがあると、もったいないようにも思います。しかし、それまで手をつけていないというのには、何かしら理由があるものです。やはり効果はあまり期待できません。
 以上のとおりですので、新しいものに手を出すのではなく、これまで使ってきたものを完璧にするということを優先してください。それこそが合格への確実な道です。また、問題集などをやりたいというときは、信頼している先生に必ず相談しましょう。自分に合ったものを教えてくれるはずです。
 新しいものをやりたいという気持ちは分かります。しかし、それも、前回お話したことと同じく、「不安」から生じるものでしょう。そういうときこそ、これまで積み重ねてきたことに「自信」をもってください。

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第78回 入試期間中の心構え・①問題の復習も答え合わせもしないこと!

 受験生の皆さんがこの記事を読むのは、共通テスト1日目が終わった後か、全科目が終了した後かと思います。このあと、2月に入るといよいよ私立大の入試期間に突入です。そこで、本番にベストのコンディションで臨めるようにするための心構えについて、3回にわたってお話したいと思います。
 まず、受験生が絶対にやってはいけないことを言いましょう。それは、「問題の答え合わせをすること」です。正解が発表される共通テストを除いて、自分で答えを調べたりしてはいけません。
 理由は明快です。次の試験にまったくつながらないからです。
これまで志望校の過去問演習を積み重ねてきてお分かりでしょうが、大学・学部によって、問題の傾向や難易度、出題形式は全く異なります。特に、共通テストは個別の入試では見られない独特の問題ですので、汎用性がありません。ですから、受け終わった大学・学部の問題はスッパリ忘れ、次に受ける大学・学部の過去問を見直して、傾向などを再確認する方が有益です。
 たしかに、できなかった問題は答えを調べたくなるものです。ですが、それをやり始めると、特に地歴・公民などでは、ネットなどを調べまくったけれども、結局答えは分かりませんでしたということがよくあります。正誤問題などがそうです(正誤問題は「分からない選択肢は△で保留」が原則でしたね。それでよいのです)。
 そもそも、できなかった問題は、ケアレスミスなどを除き、ほとんどの場合、合格点を取るのに必要ありません。受験生の皆さんに求められているのは、「満点」を取ることではなく、「合格点」を取ることです。そのために何が求められるのかを、よく考えましょう。たとえば、日本史の問題を調べて正解は用語集で頻度①の事項だったら、知っている必要はなかった、その時間は無駄だったということになります(本当にそのようなことが多いです)。
 合否がかかっていますので、答えが気になる・調べたくなる気持ちは分かります。ですが、その気持ちはどこから生じているのか、自分の心に聞いてみてください。それは、「不安」です。
だとしたら、その「不安」を解消するのに必要なことをしましょう。とにかく寝ることだったり、ずっと勉強してきた英単語帳を見直すことだったりです。そうやって、「自信」を取り戻すことで、「不安」を打ち消しましょう。正解を調べても、「不安」は増大するだけです。
 これまで積み上げてきたことを信じて、過ぎたことでクヨクヨしないようにしてください。

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第77回 共通テストの傾向と対策・⑥選択肢に迷ったときに実行すること

 前回は、共通テスト古典の解き方についてお話しました。〈文法〉に着目すると、選択肢を絞りやすくなります。本番まであと1週間ですが、文法事項は一度さらっと見直しておいてください。
 今回は、より実戦的に、選択肢に迷ったときにどう選ぶかというお話をしたいと思います。2択まで行ったのだけれども、決めきれない。あるいは、どの選択肢も正解のように見える。そんな経験はありますよね。そこで手をこまねいていても、時間を浪費するばかりです。そのような場合は、凝り固まった視点を切り替える必要があります。今回はその方法について2点紹介します。
 まず1点めは、「問題文を読み直す」ということです。共通テストのような選択問題の場合は、どうしても選択肢の方に注意が集中してしまいます。それで決めきれないときは、いったんリセットして、問題文をもう一度丁寧に読み直しましょう。そして、問われている内容をしっかりと押さえて、「問いに対する答えになっているか」という視点で選択肢を見直してください。
 「日本の首都はどこですか?」と問われて、「日本一高い山は富士山です」では答えになっていませんよね。実は、共通テストでは、各科目にわたって(特に文系科目)、内容的には正しいけれども、問いに対する答えになっていないから×という選択肢が多く見られます。そういう選択肢は、選択肢だけ見ていると、「あれ?本文の内容に合致しているんだけれども」「知識的に正しいはずなのだけれども」と、ドツボにはまってしまいます。だから、いったん問題文に立ち戻ってほしいのです。
 例えば、日本史で「7世紀後半の出来事として最も適当なものを選べ。」という問題で、8世紀の大仏開眼や9世紀の承和の変について書かれていても、正解にはなりえませんよね。「問いに対する答えになっている選択肢を選ぶ」という感覚をもつことが肝心です。
 次に、2点めとして、「正しいもの」を選ぶのではなく、「最も適当なもの」を選ぶという感覚で、選択肢を見直しましょう。共通テストでは、たいていの問題文に「最も適当なものを~一つ選べ。」とあります。それは、「正しいもの」は一概に決められないからです。
 国語で言えば、文章というのは読者の多様な解釈に委ねられています。正しい唯一の読みを決めることはできません。ですから、選択肢文にしても、客観的に見てこれくらいは妥当であろうということしか書けません。事情は知識系の地歴・公民の科目でも同じです。
 「正しいもの」を選ぼうとしていると、重箱の隅をつつくように細かいキズを探してしまいます。そして、ないはずのキズが見えてしまうのです。そのようなときは、「最も適当なもの」を選ぶという意識にリセットしましょう。
そうすると、例えば、選択肢が2つに絞られて、どちらも良いように思えるけれども、より良いと言えるのはこちらだ、というように、比較することができるようになります。そのさい、「より良い」もの判断基準となるのは、国語ならば本文の趣旨により近いかということです。「正しいもの」を選ぶという固定観念から解放されると、けっこう簡単に選べたりするものです。
 問題文を読み直す・最も適当なものを選ぶ。選択肢に迷ったときに思い出してください。

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第76回 共通テストの傾向と対策・⑤古典は〈文法〉に着目して選択肢を絞ろう!

 前回まで、共通テスト現代文の傾向と対策についてお話してきました。見かけは複数のテクストが与えられるなど新傾向の問題はありますが、指示語や因果関係を問うという基本的な部分は、センター試験から何も変わりません。センターの過去問を活用して解き方をマスターしてください。
 さて、今回は、古典(古文・漢文)についてお話しましょう。古典も、共通テストになって、センター試験にはない問題が見られますが、基礎力重視という点は確実に引き継がれています。
では、古典における「基礎力」とは何でしょうか? それは、何はなくとも〈文法〉です。文法的に正しく解釈する、これこそが問われています。裏返せば、文法的な正しい解釈なしに、鑑賞や議論はできません。ですから、どんな問題でも、文法的に正しいかどうかに着目して選択肢の正誤を判定することが肝心です。
 例えば、初年度(2021)には次の問題が出題されました。

〈例題〉
傍線部ウ「里に出てなば」の解釈として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 自邸に戻ったときには
② 旧都に引っ越した日には
③ 山里に隠棲するつもりなので
④ 妻の実家から立ち去るので
⑤ 故郷に帰るとすぐに

 句末の「なば」は、完了「ぬ」未然形+接続助詞「ば」に品詞分解され、未然形接続ですので仮定条件となり、「~してしまうならば」の意です。選択肢を見ると、仮定で解釈しているのは①のみですね(③・④は完全に確定条件です)。「里」も〈自宅・実家〉の意味ですので、①が正解と判定できます。
 この問題は選択肢が短かいですが、長い選択肢の場合ほど、〈文法〉に着目すると選択肢が絞りやすくなります。次は今年(2022)の漢文の問題(一部)をご覧いただきましょう。

〈例題〉
 傍線部C「(前略)先則恐逮于臣。」の解釈として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ~私が前に出るとすぐにやる気を失ってしまいました。
② ~以前は私に及ばないのではないかと不安にかられるだけでした。
③ ~どの馬も私の馬より劣っているのではないかと憂えるばかりでした。
④ ~私は最初から追いつかれないように気をつけていました。
⑤ ~前に出るといつ追いつかれるかと心配ばかりしていました。

 ポイントは仮定形の「則」と受身を表す置き字の「于」で、それぞれ「前に出ると」「追いつかれる」と的確に解釈している⑤が正解と判定できます。
 共通テスト本番まであと2週間ですが、〈文法〉に関してはもう一度しっかりと復習してください。そして、〈文法〉で確実に選択肢を絞れるようにしてください。
 次回は、国語に限らず、選択肢に迷ったときにどう対処するかというお話をします。

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第75回 共通テストの傾向と対策・④小説では「アンビバレントな心情」に注目して解く

 前回は、現代文の選択肢の正誤の判定のしかたとして、因果関係に着目する視点についてお話しました。「によって」「ことで」といった因果関係を示す表現がある場合、「本文に書かれている内容か」だけでなく、「因果関係が成り立つか」ということを基準に正誤を判定するようにしてください。
 さて、今回は、小説特有の読み方・解き方についてお話したいと思います。評論文が筆者の「主張」を説明する文章であるのに対し、小説は登場人物の「心情」を表現した文章です。しかも、その「心情」というのは、嬉しい・悲しいといった単純なものではありません。友人の成功を祝福しつつもそこに嫉妬の感情が含まれていたり、親を頼る気持ちと反発する気持ちが同居していたり、「心情」とは一筋縄ではいかない複雑なものであり、そうした「心情」の機微こそが小説の面白さでもあります。そして、小説の問題で問われるのもそうした「心情」です。
 ここで、記事のタイトルにも出てくる「アンビバレント」という言葉について説明したいと思います。「アンビバレント」とは、ある一つの物事に対して相反する二つの感情をいだくことで、日本語にすると「両義的」です。小説では「アンビバレントな心情」こそが読ませどころであり、解答にも直結します。
 例題として、2021年度第2問問2をご覧ください。

〈例題〉
 傍線部A「擽ぐられるような思」とあるが、それはどのような気持ちか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

① 自分たちの結婚に際して羽織を新調したと思い込んで発言している妻に対する、笑い出したいような気持ち。
② 上等な羽織を持っていることを自慢に思いつつ、妻に事実を知られた場合を想像して、不安になっている気持ち。
③ 妻に羽織をほめられたうれしさと、本当のことを告げていない後ろめたさとが入り混じった、落ち着かない気持ち。
④ 妻が自分の服装に関心を寄せてくれることをうれしく感じつつも、羽織だけほめることを物足りなく思う気持ち。
⑤ 羽織はW君からもらったものだと妻に打ち明けてみたい衝動と、自分を侮っている妻への不満とがせめぎ合う気持ち。

「擽ぐられるような思」とは、くすぐられて何だか落ち着かない感じのことですね。本文では、私は妻から羽織を褒められて嬉しかったのだけれども、それがもらいものであることを妻には告げていなかったので、気恥ずかしくてもぞもぞしている様子が描かれていました。③を見ると、「うれしさ」「後ろめたさ」という相反する2つの感情が含まれていますね。「落ち着かない気持ち」も、「擽ぐられるような思」の説明としてピッタリで、正解と判定できます。
 小説の問題に取り組む際には、「アンビバレントな心情」という視点をもつようにしてください。
 次回からは古典の問題の傾向と対策についてお話していきます。

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第74回 共通テストの傾向と対策・③選択肢文中の「によって」「ことで」などの表現に注意!

 前回は、共通テストの現代文に関して、センター試験から引き続いて「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは指示語問題として解く」ことが鉄則中の鉄則であることについて述べました。共通テストも基礎力重視であることに変わりはありません。センターの過去問を活用して、基本事項をしっかりと固めてください。
 さて、今回は、現代文の選択肢の正誤の判定のしかたについてお話したいと思います。選択肢をどう絞っていくか、迷った時にどうやって選ぶか。このあたりの悩みを抱えている受験生は多いでしょう。結局のところ、問題演習を積み重ねてカンドコロを体得するしかありません。しかし、有効な視点というのはあります。
 選択肢の正誤を判定する基準は「本文に書かれている内容であるかどうか」です。しかし、「本文に書かれている内容」であるからといって、すぐさま正しいと判定できるわけではありません。
 どういうことか? 例えば、選択肢にA・Bという2つの要素が含まれているとします。これらはともに「本文に書かれている内容」です。しかし、選択肢で「AだからB」と因果関係で結ばれていたらどうでしょうか? 本文からそのような因果関係を読み取ることができなければ、その選択肢は誤りです。このように、「本文に書かれている内容」ではあっても、因果関係が誤りであるという選択肢の作りが、共通テストでもセンター試験から引き続き見られます。
 例題として、今年度(2022)の第1問問5を取り上げましょう。ここでは、正解の選択肢と典型的な誤りの選択肢を挙げます。

〈例題〉
 【文章Ⅱ】の表現に関する説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
② 豚肉を「あなた」と見立てるとともに、消化酵素と微生物とが協同して食べものを分解する様子を比喩的に表現することで、消化器官の働きを厳密に描いている。
③ 豚肉を「あなた」に見立てるとともに、食べものが消化器官を通過していく状況を擬態語を用いて表現することで、食べることの特殊な仕組みを筋道立てて説明している。
④ 豚肉を「あなた」と二人称で表しながら、比喩を多用して消化過程を表現することで、生きものが他の生物の栄養になるまでの流れを軽妙に説明している。

 全ての選択肢が、「ことで」という表現を用いて前後の内容を因果関係で結びつけていますね。本文がなくとも、②「比喩的に表現する」ことで「厳密に」描かれるとか、③「擬態語を用いて表現する」ことで「筋道立てて説明」することになるとか、ありえませんよね。これらに対して、④は「比喩を多用」することで「軽妙に説明」するという因果関係が成立しており、正解と判定できます。
 因果関係を示す表現は、「ことで」のほか「によって」「ため」などがあります。これらの表現が出てきたら、「本文に書かれている内容か」だけではなく、「因果関係が成り立たつか」という視点から正誤を判定してください。
 次回は、小説に特有の読み方・解き方についてお話します。

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第73回 共通テストの傾向と対策・②現代文では指示語を最優先しよう!

 前回は、共通テストの総論として、文章や資料を用いた新傾向型の問題だけでなく、知識を問う従来のセンター試験型の問題も一定の割合で出題されていること、ですから、センターの過去問を活用して基本事項を固めることが有効であることについてお話しました。直前の時期だからこそ、足元をもう一度見つめ直してください。
 さて、今回から国語に絞って傾向と対策について、お話していきます。国語に関しては、共通テストの開始に先立って行われた試行調査では、これまでにないさまざまなバリエーションの問題が出題されましたが、蓋を開けてみると、初年度の2021年度、2年目の2022年度ともに、センター試験とそれほど変わらない出題であったという印象です。
 現代文で言うと、複数の文章が用意されるなど見かけ上の変化はありましたが、根っこのところでは、段落ごとの読みを積み重ねて本文全体の内容を捉えるという、きわめてオーソドックスな問題であったと言えます。
 特に注目すべきは、「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは指示語問題として解く」という、センター現代文で鉄則中の鉄則であった解法公式が、共通テストでも引き続き威力を発揮する、ということです。
 2021年度の第1問から例題を挙げます。

〈例題〉
 「表象」は、意味を伝えるものであるよりも、むしろ、形象性、視覚的側面が重要な役割を果たす「記号」である。(中略)キャラクターとなった妖怪は完全にリアリティを喪失し、フィクショナルな存在として人間の娯楽の題材と化していった。妖怪は「表象」という人工物へと作り変えられたことによって、人間の手で自由にコントロールされるものとなったのである。こうした妖怪の「表象」化は……

問 傍線部C「妖怪の『表象』化」とはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

 傍線部の直前にある幅広い指示語「こうした」が受ける内容を押さえるという、解法公式どおりの問題でした。ここでは正解の選択肢のみ挙げますので、本文の内容を過不足なくまとめていることを確認してください。

② 妖怪が、神霊の働きを告げる記号から、人間が約束事のなかで作り出す記号になり、架空の存在として楽しむ対象になったということ。

 このような指示語に着目して解く問題は、センター現代文で毎年のように出題されてきました。それは、指示語の受ける内容を押さえるということが、文章を筋道立てて読むための、基本中の基本だからです。それは、共通テストでも変わりません。センターの過去問で、解法公式のマスターを図ってください。
 次回は、選択肢の正誤を判定するうえで注意すべきことについてお話したいと思います。

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