第82回 2023年度共通テスト分析・②読解の基本を問う国語の問題
前回は、共通テストは思考力や応用力を問う新傾向型の問題が注目されているけれども、
実際には従来のセンター試験を踏襲した基礎力を問う問題が4割近くを占めていること、新傾向型の問題と言っても基本事項の理解を前提としているので、受験生としてはまずその徹底を図るべきことについてお話しました。新高3生の皆さんは、1学期の間に各科目の基礎を固めるという意識で、学習に取り組んでいただけたらと思います。
さて、今回からは、今年(2023年度)共通テストで出題された問題を見ながら、傾向を詳しく分析していきましょう。まず取り上げるのは、従来型の問題です。センター試験を踏襲していると言うが、具体的にはどのようなことか? また、必要な基礎力とは何か? といったことを、実際の問題を通じて理解してください。
次に挙げるのは、国語の第1問(評論)の文章と問題の一部です。
〈例題〉
子規の書斎は、ガラス障子によるプロセニアム(舞台と客席を区切るが額縁上の部分)つくられたのであり、それは外界を二次元に変えるスクリーンでありフレームとなったのである。Bガラス障子は「視覚装置」だといえる。
問3 傍線部B「ガラス障子は『視覚装置』だといえる。」とあるが、筆者がそのように述べる理由として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ガラス障子は、季節の移ろいをガラスに映すことで、隔てられた外界を室内に投影して見る楽しみを喚起する仕掛けだと考えられるから。
② ガラス障子は、室外に広がる風景の範囲を定めることで、外の世界を平面化されたイメージとして映し出す仕掛けだと考えられるから。
③ ガラス障子は、外の世界と室内とを切り離したり接続したりすることで、視界に入る風景を制御する仕掛けだと考えられるから。
④ ガラス障子は、視界に制約を設けて風景をフレームに収めることで、新たな風景の解釈を可能にする仕掛けだと考えられるから。
⑤ ガラス障子は、風景を額縁上に区切って絵画に見立てることで、その風景を鑑賞するための空間へと室内を変化させる仕掛けだと考えられるから。
傍線部Bの一文は、前の一文を受けていますね。要するに、プロセニアムとしてのガラス障子は、外界を二次元に変えるスクリーンでありフレームとであるから、「視覚装置」だといえるわけです。選択肢を見ると、②は「風景の範囲を定める」が「フレーム」、「平面化された」が「二次元に変える」、「イメージとして映し出す」が「スクリーン」に対応しており、ズバリ正解と判定できます。
センター試験の評論でも、傍線部の前後の読みを中心に問題が用意されていました。それは、文と文をつなぎ合わせることで小さなまとまり(段落)が形成され、それをまたつないでいくことで文章となるからです。一文一文の意味が理解できずして、文章全体の内容が分かるはずがありません。つまり、文章読解の基礎となる、文と文のつながりを、センター試験は問い続け、共通テストもそれを踏襲しているのです。
本問で、基礎力を問うということの意味が、ある程度お分かりいただけたかと思います。次回も基礎力を重視する従来型の問題を見ていきましょう。