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第117回 現代文テーマの学習法①・頻出テーマを押さえて読みの精度を高める

 前回まで、現代文における語彙の学習法についてお話してきました。入試現代文、とりわけ評論文では、「抽象」「概念」といった、ふだんの生活では使わない言葉が用いられており、そうした言葉は関連しあって一つの世界を構成しています。対義語や同義語に留意しながら、一つ一つの言葉を丁寧に理解していってください。
 さて、今回からは評論文におけるテーマの話をしていきたいと思います。皆さんの中には、評論文の問題に取り組むにあたって、「読めるときは読めるのだけれども、読めないときには全く手も足も出ない」という悩みを抱えている方が、多いのではないでしょうか? それは、評論文で論じられているテーマというのは、ふだん友人や家族と話す内容ではないからです。友人と「近代」や「言語論」についておしゃべりするなどということはありませんよね。ですから、多少は知っているテーマについて書かれていれば分かるけれども、初めて聞くテーマだとからきしダメ、ということが起こるのです。
 こうした出来不出来のムラをなくすには、評論文で論じられる頻出テーマについて知識を蓄えておくことが肝心です。実は、入試現代文で出題される評論文には、くり返し出される頻出テーマというのが存在します。その理由は、第一に、出題する大学の先生に共通する知識のバックボーンがあるという点です。大学の先生であれば共有している知の体系があり、それに沿って文章は選ばれているのです。そして、理由の第二は、高校を卒業した受験生が読める程度の内容となると、かなり限定されるという点です。専門的で高度な学術論文から出題しても、受験生は誰もできないでしょう。
 先に挙げた「近代」や「言語論」について論じられた文章を、一度は読んだことがあると思います。こうしたテーマは、それらの理由で選ばれているのです。そして、頻出テーマとなっているのです。ですから、頻出テーマの知識を蓄えておけば、何が論じられているかが分かるので、読解の精度が高まりますし、なにより「何を言っているか分からない」ということがなくなります。
 『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』では、第1章の重要語10に続いて、第2章で10の基本テーマについて、第3章で10の発展テーマについて詳しく説明しています。基本テーマで扱われているのは「科学」「身体」など最重要の項目ばかりですから、まずはここをしっかりと理解しましょう。発展テーマでは「記号」「自由」など難関大で問われる内容を扱っていますので、さらに上を目指すためにチャレンジしてください。
 次回からは、「近代」などの頻出テーマが、具体的にどのように論じられているのかについてお話していきたいと思います。

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第115回 現代文の語彙の学習法・③言葉どうしの関係を理解する

 前回は、語彙の効率的な学習法として、対義語をペアにして覚えるという話をしました
。「具体」と「抽象」、「現象」と「本質」のように、対義語には重要語が目白押しです
ので、まずはペアをしっかりと覚えること、そのうえで、2つの語がどのように対比され
るのか、意味の違いを理解してください。
 ところで、言葉どうしというのは、対義語だけではなく、同義(同じ意味であること
)・包含(ある語の中に別の語が含まれること)のようにさまざまな関係があります。そ
して、その関係に注目すると、言葉の全体像を捉えることができ、それぞれの言葉の理解
もより深まります。
 例えば、次の問題を考えてみてください。
〈例題〉次の6つの語を、意味によって3語ずつ2組に分けよ。
  普遍 特殊 主観 客観 絶対 相対
 どれも評論文では頻出の重要語ですね。そして、「普遍」と「特殊」、「絶対」と「相
対」、「主観」と「客観」と、3組の対義語になっています。まずは意味を確認しましょ
う。
・普遍:すべてのものに共通して成り立つこと
・特殊:特定の事物にのみあてはまること
・主観:その人だけの物の見方
・客観:誰にでも共通する物の見方
・絶対:他から独立して存在していること
・相対:他との関係において成り立っていること
 これらのペアを、3語ずつ2組に分け直すとどうなるでしょうか?
 まず、「普遍」と「客観」がともに「共通」という意味を含みますね。すべてのものに
共通する(普遍)ということは、物の見方も共通する(客観)ということになります。こ
れに対し、特定の事物にのみあてはまる「特殊」は、その人だけの「主観」にすぎません
。よって、「普遍-客観」という組と「特殊-主観」という組ができました。
 これに、「絶対」と「相対」を仲間に加えるとすると、どうなりますか? 「特殊」な
ものや「主観」的な見方というのは、それ一つだけではなく、横並びしているわけですか
ら、他との関係がある「相対」ですよね。一方、すべてのものに共通する「普遍」や誰に
でも共通する「客観」的な見方は、他のものがありませんので「絶対」です。こうして
、「普遍-客観-絶対」という組と、「特殊-主観-相対」という組が完成しました。
(以上の3つの対義語については、『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』の、第1章重要語
4~6で解説していますので、よく読んで理解を確かなものとしてください)
 言葉というのは、他の語から独立して「絶対」的にあるのではなく、他の語との関係に
おいて意味の決まる「相対」的なものです。そして、文章というのは言葉と言葉を紡ぐこ
とで織りなされるわけですから、言葉どうしの関係を理解することは、文章を理解するこ
とにもつながります。ですから、そうした関係に注目しながら語彙の学習を進めてくださ
い。
 次回は漢字の意味に注目した語彙の学習法についてお話します。

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第114回 現代文の語彙の学習法・②対義語をペアにして覚える

 前回は、入試現代文における語彙の学習の必要性についてお話しました。評論文では
、「普遍」「概念」などふだんの生活では用いない術語が使用されています。ですから、
英単語や古文単語と同じように現代文でも語彙の習得が求められるのです。〈日本語の運
用のしかた〉に基づく読解力と、言葉の意味に強くなる語彙力が、現代文の両輪であると
考えて勉強に励んでください。
 それでは、どのようにして言葉を覚えていけば良いのでしょうか? 今回は、語彙の学
習のしかたについて説明したいと思います。
 言葉の意味を効率よく覚えていくために、まず最初に押さえてほしいのが、対義語です
。反対の意味を持つ語をセットにすることで、理解が深まりますし、何より実際に文章を
読んでいく際に大きな力を発揮します。
 例えば、現代文の読み方・解き方を解説してきたこれまでの記事で、「具体」「抽象」
の語をたびたび用いてきました。「具体」は〈目に見える形やものとして存在すること
〉、これに対して「抽象」は〈具体的なものから共通する要素を取り出して、頭の中でま
とめること〉です。両者は対義語の関係にあります。具体的なイワシ・サバ・マグロを抽
象化すると魚、具体的なジャガイモ・キャベツ・トマトを抽象化すると具体です。
 もちろん、評論文ではより高度な内容が論じられていますが、具体と抽象の関係に変わ
りはありません。文章は、具体と抽象のくり返しによって成り立っているのでした。そし
て、筆者の〈言いたいこと〉に関わるのは抽象の方です。具体がそのものしか指し示さな
いのに対し、抽象はさまざまなものをまとめて言うことができるからです。このように
、「具体」と「抽象」を対義語として押さえると、文章の構造が見えてきます。
 対義語としては、そのほかにも「普遍」「特殊」、「本質」「現象」など、評論文で頻
出の重要語が目白押しです。まずは、対義語のペアとして覚えるところからはじめましょ
う。というのも、文章の中に「普遍」と「特殊」の語が出てきても、それを知らなければ
対義語であることに気づかないからです。逆に、対義語であることが分かっていれば、そ
の2つの内容を対比させて読むことができます。
(ちなみに、「普遍」は〈すべてのものに共通して成り立つこと〉、「特殊」は〈特定の
事物にのみあてはまること〉です。「本質」「現象」は自分で調べてください。)
 『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』では、第4章で87組の対義語を整理しています。
現時点での自分の語彙力を診断するという意味でも、まずはここから着手してください。
 次回は、言葉どうしの関係に注目して覚えていく方法についてお話します。

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第112回 入試現代文の解法・⑭「日本語の運用のしかた」に基づくからどんな問題にも通用する

今回は、これまで見てきた「幅広い指示語」「AではなくB構文」「要約・言い換えの接続語」「Aとは構文」という、「攻略アイテム10」に基づく4つの解法公式についておさらいしたいと思います。

 

1‐幅広い指示語

指示語の中でも「このように」「そういう」といった〈幅広い指示語〉は、そこまで述べてきた具体的な内容をまとめて、次の論を展開していく働きをしています。ですので、段落の終わり、あるいは次の段落の冒頭にある〈幅広い指示語〉の後には筆者の「言いたいこと」が述べられていますので、確実にマーク・線引きしましょう。解答に直結します。

 

2‐AではなくB構文

対立する内容をいったん否定してから、「言いたいこと」を述べるというのは、日本語としての一つのリズムです。ですので、「~ではなく(ではない)」と否定した後の内容はプラスの価値観となります。「ではなく(ではない)」に波線を引いたうえで、その後の記述に線引きし、プラスのマークをつけましょう。これも解答に直結します。

 

3‐要約・言い換えの接続語

「つまり」「言い換えると」などの接続語の前後は、同じ内容が述べられています。ただし、具体→抽象の関係になっている場合と、抽象→具体の関係になっている場合とがありますので、しっかりと見極めてください。筆者の「言いたいこと」としてより重要なのは、抽象の方です。

 

4‐Aとは構文

「とは」は言葉の定義をする働きをします。筆者は論の展開に必要で定義をするのですから、定義された言葉は当然キーワードです。「Aとは」のAにあたる語句をマルで囲み、プラスのマークを付けましょう。それとともに、「とは」の後に書かれている説明の部分にも線引きをして、内容をしっかりと押さえましょう。

 

これらの解法公式は、共通テストの選択問題から国公立二次の選択問題まで、どんな問題にも通用します。それはこれまでずっと述べてきたように、「日本語の運用のしかた」に基づくからです。「攻略アイテム10」は、「日本語の運用のしかた」に基づいて、文章の濃淡を〈見える化〉するものでした。

ですので、まずは「攻略アイテム10」を使いこなして、本文にマーク・線引きすることを目標としてください。そのうえで、問題の解き方をマスターしていくことになりますが、『新ゴロゴ現代文〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉』では、ここで紹介した4つ以外の解法公式についても、例題を交えて徹底的に解説していますので、何周もして使いこなせるようにしてください。

次回からは、現代文の攻略において必要なもう一つの要素である「語彙力」について説明していきたいと思います。

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第111回 入試現代文の解法・⑬「とは」で定義された内容を答案に活かす  

 

前回は、「Aとは~構文」と「AではなくB構文」という2つの解法公式の組み合わせで解く、センター試験の問題を紹介しました。1つの解答公式だけで答えが決まるということは稀ですので、複数の公式を適用するという意識をつねにもってください。

さて、今回は「Aとは~構文」を活かして答案を作成する記述問題を取り上げます。定義の表現は当然、記述問題でも解答の要素となりますので、キーワードとともに、定義の内容を答案に盛り込むようにしてください。

 

〈例題〉

河川の経験は、流れる水と水のさまざまな様態の体験である。と同時に、ア身体的移動のなかでの風景体験である。河川の整備と河川を活かした都市の再構築ということであれば、流れる水の知覚とそこを移動する身体に出現する風景の多様な経験を可能にするような整備が必要だということである。

(中略)

河川の体験とは、河川空間での自己の身体意識である。風景とはじつはそれぞれの身体に出現する空間の表情にほかならないからである。風景の意味はひとそれぞれに異なっていている。河川の空間が豊かな空間であるということは、何かが豊かに造られているから豊かだ、というわけではない。とりわけて何もつくられていなくても、たとえば、ただ川に沿って道があり、川辺には草が生えていて、水鳥が遊び、魚が跳ねる、ということであっても、そのような風景の知覚がひとそれぞれに多様な経験を与える。体験の多様性の可能性が空間の豊かさである。

 

問 「身体的移動のなかでの風景体験」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。(60字程度)

 

(中略)の後で、「河川の体験とは」「風景とは」と2つの言葉が定義されていることに注目しましょう。特に前者は、傍線部アの主語が「河川の経験」であり、傍線部中にも「体験」とあるので、絶対に見落とせません。

また、後者については、筆者が「風景」という言葉に独自の意味を込めていることに注目する必要があります。ふつう「風景」と言えば、見て楽しむだけのものです。しかし、筆者はそのように受け身的には捉えていません。河川に沿って歩き、水鳥や魚と戯れる。そのようにして身体で感じるものを「風景」と呼んでいるのです。

こうした「風景」の捉え方は、「河川の体験とは、河川空間での自己の身体意識である」という定義にも関係していますね。河川の体験とは、まさに身体で体験するものであり、それゆえ、意識は自己の身体へと向かっていきます。

 

〈解答例〉

河川に沿って歩き、さまざまな空間の表情を感じ取りながら、それを知覚している自己の移動する身体もまた意識されるということ。

 

2つの言葉の定義が答案に活かされていることを確認してください。

次回は、ここまで見てきた「攻略アイテム10」を、解法公式という形で整理したいと思います。

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第110回 入試現代文の解法・⑫複数の解法公式を組み合わせて解く

 前回は、「Aとは」「Aというのは」という定義の表現について説明しました。定義をす
るということは、議論において必要であるということですから、本文におけるキーワード
を示していると捉えることができます。定義されているAの語をマルで囲むとともに、そ
の後の説明の部分を線引きして押さえましょう。
 さて、定義の表現で示されるキーワードは、もちろん解答にも直結します。次のセンタ
ー試験の問題をご覧ください。
〈例題〉
 「レジリエンス」とは、近年、さまざまな領域で言及されるようになった注目すべき概
念である。この言葉は、「攪乱を吸収し、基本的な機能と構造を保持し続けるシステムの
能力」を意味する。
 レジリエンスの概念をもう少し詳しく説明しよう。レジリエンスは、もともとは物性科
学のなかで物質が元の形状に戻る「弾性」のことを意味する。六〇年代になると生態学や
自然保護運動の文脈で用いられるようになった。そこでは、生態系が変動と変化に対して
自己を維持する過程という意味で使われた。しかし、ここで言う「自己の維持」とは単な
る物理的な弾力のことではなく、環境の変化に対して動的に応じていく適応能力のことで
ある。
 レジリエンスは、回復力(復元力)、あるいはサステナビリティと類似の意味合いをも
つが、Aそこにある微妙な意味の違いに注目しなければならない。
 冒頭の一文で「『レジリエンス』とは」とあり、次の一文で「攪乱を吸収し、基本的な
機能と構造を保持し続けるシステムの能力」とカギカッコ付きで定義されていますね。続
く段落ではさらに詳しく説明されていますが、ここでは「ではなく」に注目しましょう
。「AではなくB構文」ですので、「ではなく」の後の「環境の変化に対して動的に応じて
いく適応能力」を押さえます。環境の変化に対応しながら、基本的な機能と構造を維持し
ていく能力のことを、レジリエンスと言っているわけです。
 問題は、サステナビリティとの違いを問うものでした。
〈問題〉
 傍線部A「そこにある微妙な意味の違い」とあるが、どのような違いか。その説明として
最も適当なものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ……レジリエンスは弾性の法則によって本来の形状に戻るという違い。
② ……レジリエンスは環境の変化に応じて自らの姿を変えていくことを目指すという違
い。
③ ……レジリエンスは適度な失敗を繰り返すことで自らの姿を変えていくという違い。
④ ……レジリエンスは均衡を調整する動的過程として自然を捉えるという違い。
⑤ ……レジリエンスは自己を動的な状態に置いておくこと自体を目的とするという違い

 選択肢文前半のサステナビリティについての記述は省略しましたが、レジリエンスにつ
いての記述を見るだけでも、「環境の変化に応じて自らの姿を変えていく」とある②がズ
バリ正解と判定できますね。
 本問は、「Aとは~構文」と「AではなくB構文」という2つの解法公式の組み合わせで
解く問題でした。たいていの問題は1つでは解答を決めきれませんので、いくつもの解法
公式を適用するという姿勢で臨んでください。

 次回は、定義の表現に着目して解く記述問題を取り上げます。

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第109回 入試現代文の解法・⑪キーワードを示す「とは」

 ここまで、「攻略アイテム10」の中でも特に重要な、幅の広い指示語・ではなく構文・要約・言い換えの接続語について、入試問題も含めて詳しく解説してきました。もう一度確認しておきますが、「攻略アイテム10」は、「日本語の運用のしかた」に即して、文章の濃淡を捉え、筆者の〈言いたいこと〉を浮き彫りにするためのルールです。「意味」は取り違えますが、「型」は間違えることはありません。「攻略アイテム10」にしたがって手を動かし、筆者の〈言いたいこと〉を「見える化」してください。
 さて、筆者の〈言いたいこと〉をつかむと言うとき、「本文におけるキーワードを意識しながら読みなさい」といった指導を受けたことがあると思います。本文における議論の中心となる言葉、それがキーワードです。もちろん、筆者の〈言いたいこと〉にも関わります。ですから、キーワードは何かと考えながら本文を読むことはとても大切なことですが、実は、キーワードを示す表現もあります。それが、「攻略アイテム10」の「5重要接続語・文末表現マーク」の中にある「Aとは~構文」です。
 言葉の定義をするときに、「とは」「というのは」などの表現を用いると思います。では、どういうときに言葉の定義を説明するでしょうか? 議論していることに関係のないような言葉を、わざわざ定義することはないですよね。その言葉が重要であり、議論にも関わるからこそ、筆者は定義をするわけです。
 ですので、「Aとは」「Aというのは」などの形で定義されている言葉は、キーワードだと判断して間違いありません。「とは」「というのは」に波線を引き、定義されているAの語をマルで囲んでください。そして、「とは」「というのは」以降に書かれている内容がその言葉の定義ですから、線引きしてしっかりおさえましょう。
 次の例文をご覧ください。

〈例文〉
 死に直面してびくともしない名僧は立派すぎる。凡人は、ふだん名僧といわれる存在でありながら、死に際して悲しみ、うろたえるような人に、かえって共感し、救われるものを感じることがある。救済とは救ってくる相手に他者性とともに自己同一性をも見いだすということであろう。ここにも逆説がある。宗教的生とは死をおそれない生きかたではなく、死を恐れてもよいという生きかたではないだろうか。

 「救済とは」「宗教的生とは」と、定義が連続していますね。私たち凡人が救いを覚える名僧の存在というのは、立派でありながら(他者性)、私たちと変わらず死に際してうろたえる(自己同一性)という「逆説」がよく分かりますね。
 次回は、定義の表現に着目して解く問題を取り上げて解説します。

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第108回 入試現代文の解法・⑩「つまり」の前後を記述の解答に活かす

 前回は、要約・言い換えの接続語である「言い換えれば」に注目して解くセンター試験の問題を取り上げました。傍線部に続く「言い換えれば」の後の内容を踏まえている選択肢は、1つしかありませんでしたね。このようにズバリ正解が決まる場合は少ないですが、2択や3択に絞ることはできます。要約・言い換えの接続語の前後は相互ヒントの関係にありますので、解答に活かしてください。
 今回は、記述問題に挑戦していただきます。といっても、考え方は全く同じです。「つまり」「言い換えれば」の前後の内容を答案に盛り込んでいきましょう。

〈例題〉
ふつう死は、心臓が停止して血流がとだえ、それに続く全身の生命活動の停止として起こる。ところが脳が先に機能停止におちいることがある。この場合、中枢神経をまとめる脳の死によって全身もやがて死ぬことになるが、人工呼吸器の力でしばらくの間は(そして現在ではかなり長期にわたって)脳死状態の身体を「生かして」おくことができる。つまり死を抑止するテクノロジーの介入によって、生を手放しながらなお死を中断された、ある種の中間的身体が作り出されるのである。ア脳死が心臓死と決定的に違うのは、死が全身に及ぶプロセスや、そのタイム・ラグのためではなく、このきわめて現代的な「死」が、上に述べた「中間的身体」を生み出すからである。脳の機能を失ったこの身体は、もはや人格としての発現をいっさい欠いて、いわば誰でもない身体として横たわっている。

問 「脳死が心臓死と決定的に違う」(傍線部ア)理由を、筆者の論旨にしたがって説明せよ。(60字程度)

 脳死について論じた文章ですね。まず、「つまり」で始まる傍線部アの前の一文に注目しましょう。脳死の段階では、まだ心臓は動いています。それゆえ、その状態を、「生を手放しながらなお死を中断された、ある種の中間的身体が作り出される」と述べているわけです。
 しかし、「中間的身体」では意味が分かりません。そこで、傍線部の後を読むと、「いわば」を挟む形で、「脳の機能を失ったこの身体は、もはや人格としての発現をいっさい欠いて、いわば誰でもない身体として横たわっている」とあります。脳死の状態では自己の意識がありません。まさに「人格としての発現をいっさい欠いて」おり、さらにそれを「誰でもない身体」と表現しています。この点を押さえて解答をまとめれば良いでしょう。

〈解答例〉
心臓死が全身的な生命活動の停止につながるのに対して、脳死は人格の発現を欠くが身体的な死には至らない状態を作り出すから。(59字)

 もう一度おさらいをすると、要約・言い換えの接続語の前後は、具体→抽象という順の場合と、抽象→具体という順の場合があります。具体と抽象の関係を見極めて、筆者の主張である抽象の部分の内容を解答に活かしてください。
 次回からは言葉の定義をする表現について解説します。

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第107回 入試現代文の解法・⑨「つまり」「言い換えれば」の前後は相互ヒントとなる

 前回は、「つまり」に代表される要約・言い換えの接続語について解説しました。評論文は具体と抽象の繰り返しによって成り立っていますが、要約・言い換えの接続語の前後では、具体→抽象の関係になっている場合と、抽象→具体の関係になっている場合とがありますから、マーク・線引きしながらどちらなのかを見極めてください。
 今回は、要約・言い換えの接続語に注目して解く問題を、センター試験から例題として取り上げます。具体→抽象の関係であるにせよ、抽象→具体の関係であるにせよ、前後は内容的に同じことを言っているわけですから、それをヒントにして解くことが肝心です。

〈例題〉
 さて、よく言われるように、紙に記された楽譜は、実際の演奏によって音響として実現されない限り、いまだ音楽ではない。存在論的な視点から考えれば、この指摘はまったく正しい。しかしその一方で、作曲家が自らの音楽作品を提示し得るのは、楽譜という形においてでしかない。作曲家は、自分の作品を直に音響として人々に提示することはできないのである。作曲家が提示した楽譜は、演奏者によって演奏されて、A音楽としての実体を得る。言い換えれば、作曲家が提示するものは、音楽作品そのものであるよりも、むしろ、その音楽作品の「テクスト」なのであって、演奏者は、その「テクスト」を解釈して音響化することで、その音楽作品を実現する。

問 傍線部A「音楽としての実体」とあるが、「音楽としての実体」についての作者の考え方を説明したものとして適当なものを、次の①~⑤のうちから選べ。

① 紙の上に書かれた楽譜としての音楽は、実際に演奏者によって演奏されることで、はじめて自立し完結した「テクスト」として存在するようになる。
② 音楽作品は、様々な演奏者によって色々な解釈をほどこされることで、はじめて作曲家の特定の作品として存在するようになる。
③ 一般になじみにくい近代西洋音楽の作品は、実際に演奏され音響構成体となることで、はじめて幅広い聴衆層に受け入れられる存在となる。
④ 楽譜の存在がそのまま音楽というわけではなく、音楽は演奏され感覚に訴えるものとなることで、はじめて実現された音楽として存在するようになる。
⑤ 作曲家が提示した楽譜を演奏者ができるだけ忠実に演奏することで、はじめて音楽は筆記的特性に富んだ「テクスト」として存在するようになる。

 傍線部の直後にある「言い換えれば」に注目しましょう。「音楽としての実体」ではよく分からないので、具体的に説明しているわけです。作曲家が示す楽譜は「テクスト」にすぎません。それを演奏者が演奏(音響化)することで、「音楽作品」として「実現」されるというのです。この内容を端的に述べている、④が正解とズバリ判定できます。その他の選択肢は、「言い換えれば」以降の内容を踏まえていないことを確認してください。
 次回は、要約・言い換えの接続語に着目して解く記述問題にチャレンジしましょう。

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第106回 入試現代文の解法・⑧要約・言い換えの接続語が示す具体と抽象の関係

 前回は、評論文は具体と抽象の繰り返しによってできているということについて説明しました。読者に分かりやすいように具体例を用いて説明し、それを抽象化して〈言いたいこと〉を述べる。筆者の主張は抽象の部分にありますので、しっかりと押さえてください。
 さて、具体と抽象の関係を示す働きをしているのが、「このように」「そういう」などの〈幅広い指示語〉でしたね。具体的に述べたうえで、段落の終わり、あるいは次の段落の冒頭で〈幅広い指示語〉を用いて、主張に落とし込むわけです。〈幅広い指示語〉は本当に解答に直結しますので、「攻略アイテム10」を用いて確実にマーク・線引きしましょう。
 そして、この〈幅広い指示語〉とともに具体と抽象の関係を示すのが、「つまり」「言い換えれば」などの要約・言い換えの接続語です。今回はこの働きを解説します。
 第一に、要約・言い換えの接続語が本文に出てきたら注意すべきことは、具体→抽象の順であるか、抽象→具体の順であるかを見極めることです。〈幅広い指示語〉では必ず具体→抽象の順ですが、要約・言い換えの接続語では逆の場合があります。
 例文で見てみましょう。

1‐現代は、マス・メディアと呼ばれるものの圧倒的な発達に支えられた、情報と宣伝の時代であり、つまり、言葉の氾濫の時代である。
2‐そのとき我々は投影のひきもどし、つまり、他人に投げかけていた影を、自分のものとして自覚しなければならない。

 まず、1の例文では、現代は「マス・メディアと呼ばれるものの圧倒的な発達に支えられた、情報と宣伝の時代」であると詳しく説明したうえで、要約・言い換えの「つまり」の後で「言葉の氾濫の時代」であるとまとめています。ですから、具体→抽象の順です。
 これに対して、2の例文では、先に「投影のひきもどし」と端的に述べたうえで、それを「つまり」の後で「他人に投げかけていた影を、自分のものとして」と説明しています。「投影」とは、心理学用語で、自分の心のうちにある感情を相手に投げかけることです。好意を寄せている異性に少し優しくされただけで、向こうにも気があるのではないかと思うことがありますよね。でも、それは「投影」による勝手な思い込みなので、勘違いしないように「自覚しなければならない」と述べているのです。それはさておき、この例文では抽象→具体となっています。
 このように、要約・言い換えの接続語の前後の関係は、具体→抽象の場合と抽象→具体の場合がありますので、判別してください。そして、筆者の〈言いたいこと〉は抽象にありますから、そちらをチェックしましょう。例文1では「言葉の氾濫の時代」、例文2では「投影のひきもどし」です。要約・言い換えの接続語の前後ではキーワードとして示されることが多いですので、丸囲みしてプラスのマークを付けましょう。
 次回は、要約・言い換えの接続語に着目して解く問題を紹介します。
 

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