第7回 共通テストで求められることは何か?・⑦問いに対して答える意識
前々回・前回と、共通テストの新傾向の問題を見てきました。問題文や資料文の読みと組合せる必要があり、単純に知識だけで解けるわけではないことに注意が必要でした。
今回は新傾向の問題として、「問いに対する答え」を求める問題を紹介します。問いに答えるのは当り前のように思えて、受験生はけっこうミスをします。どのように選択肢の正誤を判別するかということを意識しながら、共通テスト初年度に政治・経済で出題された次の問題を解いてみてください。
Xが下線部で示したように考えることができる理由として最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
X:選挙監視団の目的は、自由で公正な選挙が行われるようにすることだよね。民主主義における選挙の意義という観点から考えれば、そうした選挙を実現させることは、その国に民主的な政治体制が定着するきっかけになるよね。
① 民主主義においては、国民に選挙を通じた政治参加を保障することで、国の統治に国民全体の意思を反映すべきものとされているから。
② 民主主義においては、大衆が国の統治を特定の個人や集団による独裁に委ねる可能性が排除されているから。
③ 民主主義においては、暴力によってではなく裁判によって紛争を解決することとなっているから。
④ 民主主義においては、国民が政治的意思を表明する機会を選挙以外にも保障すべきものとされているから。
日本も国際貢献としてPKO(国連平和維持活動)で選挙監視団を紛争終了後の国・地域に派遣しています。選挙不正がまかりとおれば、陣営の対立を煽って、秩序の回復などできないからです。その意味で、公正な選挙は民主主義の根幹にあります。
選択肢を見ると、①は問題なく○、②は「独裁に委ねる可能性が排除」が×、選挙で独裁者を選んでしまう可能性があるからこそ、私たちは良識を働かせて投票しなければなりません。③の「裁判」の指摘は○、④も「国民が政治的意思を表明する機会を選挙以外にも保障」とはリコールなどの直接民主制のことですから○です。
内容的に正しい3つの選択肢からどうやって正解を絞り込むか。下線部の「民主主義における選挙の意義という観点から考えれば」という文言に注目してください。公正な選挙が民主主義の実現に資する理由が問われているのですから、③の裁判や④の直接民主制は関係ありません。「国民に選挙を通じた政治参加を保障」とある①が正解と判定できます。
「今日のタイガースはどうだった?」と問われたら、「勝った」「負けた」などと答えるもので、たとえ本当に雨が降ったとしても、「雨だった」では答えになりません。当り前のことなのですが、いざ問題として出されてみると、内容的な正誤の判定ばかりに気が取られて、「問いに対して答える」という意識が希薄になる受験生が少なくありません。この手の問題は、実はセンターでも出題されていました。共通テストではより重視されていますので、どの科目でも、まずは問われている内容を押さえることを心がけてください。
次回は国語に戻って新傾向の問題を取り上げたいと思います。