第19回 共通テスト攻略法・⑨傍線部内の文法事項と単語に焦点を絞る
今回は、古文の問題の解き方についてお話したいと思います。前回まで述べてきたとおり、傍線部を押さえるということが前提ですが、では、古文の場合、傍線部のどこに注目すれば良いか? それは、文法と単語です。
この点については、すでに第4回の記事でも指摘しました。センター試験から共通テストに移行しましたが、基本に忠実であることに変わりはありません。だからこそ、文法と単語に注目すべきなのです。
たとえば、センター最終年度の2020年度の本試験では、次のような問題が出題されました。
〈問題〉
傍線部B「つてならでこそ申すべく侍るに」とあるが、尼上はどのような思いからこのように述べたのか。その説明として最も適当なものを選べ。
① 病気のためにかなわないが、本来であれば直接自分が姫君と宮との仲を取り持って、二人をお引き合せ申し上げるべきだ、という思い。
② 長生きしたおかげで、幸いにも高貴な宮の来訪を受ける機会に恵まれたので、この折に姫君のことを直接ご相談申し上げたい、という思い。
③ 老いの身で宮から多大な援助をいただけることはもったいないことなので、宰相を介さず直接お受け取り申し上げるべきだ、という思い。
④ 今のような弱々しい状態ではなく、元気なうちに宮にお目にかかって、仏道について直接お教え申し上げたかった、という思い。
⑤ 宮が自分のような者を気にとめて見舞いに来られたことは実に畏れ多いことであり、直接ご挨拶申し上げるべきだ、という思い。
まず注目すべきは、冒頭の「つてならで」です。「つて」は、現代語でも「人づてに聞く」などと言いますが、漢字で「伝手」と書き、〈物事を進めるにあたって頼りになる人〉を意味します。傍線部では、断定の助動詞「なり」の未然形と、打消接続の接続助詞「で」が続いていますので、直訳すれば「頼りになる人を介してではなくて」となります。要するに、「誰かを間に挟むのではなくて、自分が直接」ということです。
選択肢を見ると、すべてに「直接」の語がありますので、ここでは判断できません。
そこで、次に「申すべく侍るに」を検討します。「申す」が補助動詞ではなく本動詞として用いられていることに注目してください。つまり、何か「申し上げる」べきことがあったということです。ここに焦点を合わせて選択肢を見ると、①「お引き合せ申し上げる」、②「ご相談申し上げ」、③「お受け取り申し上げる」、④「お教え申し上げ」は、補助動詞として解釈しているので×です。よって、「ご挨拶申し上げる」とある⑤が正解と判定できます。
ここで注意してほしいのは、この問題は「尼上」の「思い」が問われていますが、「申す」の文法的解釈で正解が決まるということです。これも現代文と同じで、どんなに内容的に正しく見えても、文法的に誤っている選択肢は正しくありません。古文の問題では、傍線部にある文法事項と単語に焦点を絞ってください。
次回は、漢文の問題の解き方について解説します。