前回は、過去問を解き終わったあとに、間違えた問題をリストアップして原因を分析しようというお話をしましたが、それとともに行ってほしいのが、出題傾向の分析です。
 まず、大問ごとに、出題内容と出題形式を整理しましょう。そのうえで、難しかった設問や時間のかかった設問を書き出していくのです。
 それならば、赤本などにも載っているではないかと思われるかもしれません。しかし、それを自力で作成することに意義があるのです。
 第一に、自分で作るのと、書かれたものを読むのとでは、定着度が違います。少なくとも第一志望の大学学部に関しては、まずは何も参照しないでまっさらな状態で過去問を解いてください。実際に問題に取り組んだ手応えを踏まえ、自分で分析することが肝心です。その後で赤本などの分析を見て修正したほうが、納得づくで進められます。
 第二に、赤本などの分析は一般論ですが、自分で分析するならば自分の実力や現状に即したものを作成することができます。たとえば難易度です。古文が難しいと評価されていても、自分が得意ならばそれほど苦にならないでしょうし、英作文の難易度は低めとされていても、苦手ならば手も足も出ないかもしれません。あくまでも自分を基準に分析をする。そうすることで、今の自分には何が足りないのか、どこを重点的に勉強するべきかが明確になるはずです。
 第三に、自分で実際に問題にあたってみることで、赤本などの分析には書かれていない、思わぬ発見があるものです。たとえば、英文法で仮定法過去完了の問題が前の年度にも出ていたなと思って、調べてみると、過去5年で4回出題されていることが分かる、といったようなことです。これも、自分で発見したことであるからこそ、定着します。
 総じて言えるのは、自分で試行錯誤してつかみ取ったものほど身になるということです。書かれている「傾向と対策」などを読んだほうが効率が良いのは確かですが、それで本当に役立てられるかというと疑問符が付きます。どんなに時間がかかっても、どんなに稚拙でも、自分で見出したものは必ず力になります。入試直前期はどうしても時間に追われているように感じますが、「急がば回れ」という精神的な余裕が大切です。
 以上、4回にわたって過去問演習のしかたについてお話してきましたが、ただ問題を解くというのではなく、ミスの書き出しにしろ傾向の分析にしろ、次につなげる・次に生かすという意識をもって進めてください。
 次回からは入試直前期のギアの入れ方についてお話します。