試験は誰でも緊張するものです。とりわけ、長い期間勉強してきた成果が問われ、合否で今後の人生が変わってしまう(けっして大げさではありません)となれば、緊張して当然でしょう。むしろ、緊張しないのならば、本気で受験勉強をしてきたのかを疑われます。
 緊張は、けっして悪いものではありません。緊張しているということは、それだけ集中力が高まっているということでもあります。「普段通りの力を発揮して」と言いますが、緊張して普段以上の力が出ることもあるでしょう。もちろん、緊張から普段はしないようなミスをすることもありますが、差し引きすれば確実にプラスです。
 ですから、「緊張しないように」と構えるよりも、「緊張してもいいんだ」くらいの気持ちでいた方が、本番では力を発揮できると思います。とはいえ、過度の緊張はやはり良くありません。そこで、試験当日、緊張で身動きできないように感じたら、次のことを思い出してください。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)により、私たちの生活は大きく変わりました。特に2020年は、学校も休校となってオンラインによる授業が続き、部活動や文化祭などの学校行事もままならなかったと思います。
 その影響は、受験勉強にも少なからずあったでしょう。クラスメイトと机を並べて切磋琢磨するのではなく、ひとり自室で勉強を続けるというのは、かなり神経をすり減らしたと思います。気軽に友達に会えないというのも、ストレスになっていたかもしれません。受験勉強に打ち込む環境としては、けっして恵まれたものではありませんでした。
 しかし、そうした状況だからこそ、支えてくれた人もたくさんいたに違いありません。ここ数年の受験業界では、「コーチング」が重視されています。たんに授業をして終わりではなく、受験生が勉強を進めていくうえで手厚くサポートしていく。その重要性が強く認識されたのが、コロナ禍の状況でした。学校や塾・予備校の先生が、対面・オンラインを問わずまめに声をかけてくれて、励みになった人も多いと思います。
 そのようにして支えてくれたのは、先生だけではありません。近所の人や、行きつけのお店の店員さんとの何気ないやりとりも、心を和ませるものだったはずです。
 試験会場で、あるいは試験会場に向かう電車の中で、緊張で居ても立ってもいられなくなったら、そうした人たちのことを思い出してください。そして、小声でそっと「ありがとう」と言ってみてください。人は感謝の気持ちを持っているときこそ、最も力を出せます。緊張も解け、やるぞという気持ちが湧いてくるに違いありません。