前回の記事では、今年(2022年度)の共通テストにおいては思考力重視の新傾向型の問題の割合が大きくなり、それが要因となって平均点が大幅に低下したことについてお話しました。今後も新傾向型の問題が増加すると予想されることも踏まえ、「共通テスト対策」ということを意識しながら受験勉強を進めていってください。
今回からは、科目ごとに具体的に問題の分析をしていきたいと思います。まずは国語(評論)からです。
センター試験から共通テストへの移行で、最も大きな変化が予想されているのが国語です。記述式問題は見送りとなったものの、試行調査では新学習指導要領に加わる「実用的な文章」が出題され、また、複数のテクストや図表を組み合わせた問題も用意されました。国語の根幹に〈読解力〉があることは変わりませんが、それだけではなく、応用力や問いに的確に答える力も求められるようになっています。
そうした中で、今年の第1問(評論)では、共通するテーマについて論じた2つの文章が本文として用いられました。昨年(2021年度)は、本文に関連する文章が最後の設問(問5)に用意されましたが、そこからさらに一歩踏み込んだ出題であったと言えるでしょう。複数のテクストを比較しながら読むというのは、新学習指導要領で掲げられた課題ですので、今後もこのような形で出題されていくだろうと考えられます。
さて、複数のテクストが課された場合には、内容的な共通点と相違点を意識しながら読むというのがポイントです。実際に、今年の問題でも、最後の設問(問6)で、生徒がまとめたメモの空欄に入る文言を問う形で、共通点と相違点の読み取りが求められました。ただし、選択肢文には、本文の語句は用いられておらず、いったん自分の頭で咀嚼する必要があるという点で、難易度は高かったと言えます。ここでは、正解の選択肢のみをご覧いただきましょう。

③ 無意識によだかが羽虫や甲虫を食べてしまう行為には、地球全体の生命活動を循環させる重要な意味がある。しかし、見方を変えれば、一つ一つの生命がもっている生きることへの衝動こそが、循環のプロセスを成り立たせているとも考えられる。

「見方を変えれば」が、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の視点の違い(「食べる」という行為を個のレベルで捉えるか、全体のレベルで捉えるか)を示しているのですが、正確に読み切るのは難しかったと思います。
一方で、昨年(2021年度)の引用文つきの問題(問5)は、本文との共通点に着目すれば容易に解けましたので、まずは昨年の問題に挑戦してみることをお奨めします。
次回も国語(評論)の新傾向型の問題を取り上げます。
※試行調査および2021年度の問題については第1回~第10回、攻略法については第11回~第20回の記事で説明していますので、そちらをお読みください。