第38回 2022年度共通テスト分析・⑧地歴・公民1
今回からは、地歴・公民について見ていきましょう。地歴・公民の各科目では、新傾向型として、資料・図表の読みが求められる問題が出題されるようになりました。昨年度(2021)と比較して、今年度(2022)はその比率が大きくなっており、そのことが日本史・倫理をはじめとして平均点を押し下げる要因として働いたと考えられます。
そうした中で、今後も出題が予想されるタイプの問題を紹介しましょう。日本史の問題からです。
〈問題〉
次の文章Ⅰ~Ⅲは、それぞれ憲法十七条・養老令・延喜式のいずれかの一部である。法整備の過程を考えて、古いものから年代順に正しく配列したものを、後の①~⑥から一つ選べ。
Ⅰ 凡そ調の絹・絁・糸・綿・布は、並びに郷土の所出に随えよ。
Ⅱ 国司・国造、百姓に斂る(おさめとる・税を取る)ことなかれ。国に二の君なし。民に両の主なし。
Ⅲ 凡そ諸国の調・庸の米・塩は、令条の期(期限)の後、七箇月の内に納め訖(お)えよ。
(選択肢は省略)
年代順並べ替え問題はセンター日本史でも定番の出題形式でしたが、史料の並べ替えを求めるというのも初めてです。また、解答には学習した知識をもとに推理する必要があります。
まず、Ⅱが、「国造」という律令制定以前の地方官名が含まれていることから、憲法十七条と判定できます。残るⅠ・Ⅲですが、ここでは、延喜式の「式」が令の施行に関わる細則であるということを踏まえて考えましょう。令を補足する「格」とともに、実情に即した形での律令制の再建を目指した平安初期に整備されたのでした。
すると、期限から七カ月以内に調・庸を納めなさいと具体的に規定しているⅢが「式」であると推理できるでしょう。また、「令条」と「令」に言及していることからも、「令」とは考えられません。よって、Ⅲが延喜式、Ⅰが養老令と判定され、年代順に並べ替えると、Ⅱ(憲法十七条)→Ⅰ(養老令)→Ⅲ(延喜式)となります(なお、正解の選択肢は③でした)。
資料や図表を用いた問題は、それらを読み取る力が求められます。その意味で、これまで以上に国語(現代文)の重要性が高まっていますし、問題演習を通じて読解力を鍛える必要もあります。
その一方で、基本事項の理解が問われないという難点を抱えていましたが、今年度の問題は知識と読み取りを組み合わせて解く問題が増加しており、一次試験として受験生の基礎学力を問うという共通テストの位置づけからしても、今後はそうした問題が主流になっていくのではないかと考えられます。
次回も地歴・公民から新傾向型の問題を紹介しましょう。
※試行調査および2021年度の問題については第1回~第10回、攻略法については第11回~第20回の記事で説明していますので、そちらをお読みください。