前回の記事では、今年度(2022)の日本史の問題を取り上げて、地歴・公民の各科目では、知識と資料・図表の読みを組み合わせて解く問題が主流になっていくのではないかという予測を述べました。実際に、単純に資料・図表を読むだけでは解けない問題が、日本史以外の科目でも出題されています。今回は、現代社会の問題を紹介しましょう。

〈問題〉
日本の地方圏において、身近な地域の持続可能性を高める上で、「それぞれの地域の人々が、その地域内の資源(ヒトやモノ、カネなど)と地域外の資源を組み合わせ、取組みの主体となること」という観点に直接基づくと考えられる取組みを次のア~ウからすべて選んだとき、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。

ア 空き家の有効利用のため、ある地区の町内会のリーダーたちが、その所有者に物件の提供を呼び掛け、政府のモデル事業を活用してICT環境を整備し、テレワークが可能な人々に移住者として定着してもらえるようにする。
イ 多文化共生に取り組む地元NPOが、自治体の助成金を活用して、商店・病院が掲載された多言語マップの作成を県外のデザイナーに発注し、それを印刷、配布することで、外国人にも住みやすいまちづくりを行う。
ウ 経営不振に陥ったゴルフ場を閉鎖した外国企業が、この地域が太陽光発電に適した環境であることをいかして、ゴルフ場の跡地にソーラーパネルを設置し、そこで生産された電力を電力会社に買い取ってもらう。
(選択肢は省略)

SDGsに対する社会的な関心は高まっており、現代社会では昨年度(2021)・今年度(2022)と2年続けて出題されています。「持続可能性」もキーワードとして押えておきたいところです。
本問は、問題文で述べられている条件を押さえて、ア~ウのそれぞれの事例がそれを満たしているかを判定する必要があります。アは、「町内会のリーダーたち」が「主体」となり、「空き家」という「地域内の資源」を活用して、移住者という「地域外の資源」を取り込もうとしているので〇。イも、「地元NPO」が地域内の「商店・病院」の多言語マップを作成することで外国人を誘致しているので〇。これらに対し、ウは「主体」が「外国企業」であって「地域の人々」ではないので×です(なお、正解の選択肢は②でした)。
センター現代社会でも調査の方法について出題されていましたが、名称を問うなどの簡単なものでした。しかし、共通テストでは本問のように前提を踏まえた推論が求められています。それは、新学習指導要領が目標として掲げる「思考力」に沿ったものでしょう。いずれにしろ、一筋縄ではいきませんので、十分な問題演習が必要です。
次回は今年度の共通テストについてまとめをしたいと思います。
※試行調査および2021年度の問題については第1回~第10回、攻略法については第11回~第20回の記事で説明していますので、そちらをお読みください。