第53回 入試現代文の解き方・③〈幅広い指示語〉は必ず解答に絡む
前回は、最も頻度の高い〈解法公式〉として、「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは、指示語問題として解く」を取り上げました。指示語が受ける内容を押さえるというのは、小学校のころから言われていると思いますが、読解の基本中の基本であるので、おろそかにしないでください。入試現代文はきわめて基本に忠実です。
さて、指示語の中でも特に重要なのが、「このように」「そうした」などの〈幅広い指示語〉でしたね。〈幅広い指示語〉は、そこまでの具体的な内容をまとめ、次の展開へとつなげる働きをしました。ですから、〈幅広い指示語〉の後にはキーワードを含む「筆者のいいたいこと」が述べられており、当然、解答に絡む可能性は高くなります。
〈幅広い指示語〉が出てきたら、いったん立ち止まって、本文の内容を頭の中で整理するようにしましょう。
今回も、センター試験から例題をご覧いただきます。
〈本文〉
……それは、伝統を単に受けいれて引き継ぐことでもなく、単に拒絶するのでもない。「書くこと」の新たな形での復権が成されるとき、そこに、単なる否定ではない、「近代」の超克が達成できるのではなかろうか。そういう期待をもって活動している作曲家は、「ジャズは好きですか?」という問いに、多分、漠然と「いいえ」とだけ答えてしまうことになるのだ。
傍線部の一文は、〈幅広い指示語〉である「そういう」で「作曲家」の「期待」についてまとめたうえで、そのような「作曲家」はジャズが好きかという問いに「いいえ」と答えると新たな内容を付け加える、という構造になっています。「期待」であることに着目して「そういう」の内容を押さえると、「新たな形での復権が成される」こと、そして、それにより「『近代』の超克が達成できる」ことです。
問題は傍線部のように言える理由を問うものでしたが、選択肢は作曲家についての説明の部分のみ載せます。そこだけで正誤が判定できるからです。
〈問題〉
① 急進的な前衛音楽家にとって……
② 音楽を「書き記す」という伝統を洗練させてきた近代西欧の作曲家にとって……
③ 「書くこと」を距離をとって見ることができるようになった作曲家にとって……
④ 書くという伝統を単に受け継ぐだけではなく、拒絶するだけでもない作曲家にとって……
⑤ 「書くこと」に新たな可能性を見いだそうとする作曲家にとって……
「新たな形での復権」を「新たな可能性」と言い換えた⑤がズバリ正解と判定できます。④も本文にある内容ですが、「~でもなく、~でもない」と否定を重ねているだけで、「期待」の説明になっていません。
解答の根拠は本文にあるわけですが、やみくもに探しても見つかりません。まずは傍線部にある指示語を、とりわけ〈幅広い指示語〉を手がかりにしてください。
※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。