第54回 入試現代文の解き方・④解答の根拠を探す範囲は?
この連載では現在、言葉の〈サイン〉を活用して解答の根拠を見つけ出す〈解法公式〉について解説しています。本文の読みにおいても、問題を解くにあたっても、言葉の〈サイン〉をフル活用してください。
ところで、解答の根拠は本文中にありますが、ある問題を解くのに本文全体を読み直す必要があるというわけではありません。傍線部や空欄があれば、ほとんどの場合、解答の根拠はその周辺にあります。では、どれくらいの範囲で探せばよいでしょうか?
過去のセンター評論のすべての問題を分析したところ、解答の根拠は傍線部の前後2行に約5割、前後5~6行に8割近く集中しているというデータが得られました。前後2行というのは大半が指示語の受ける内容です。また、前後5~6行というのは形式段落1段落分にあたります。つまり、段落の内容をきちんと読み取り、そこから解答の根拠を見つけ出せば、8割の問題は解けるということです。
これは、出題者が受験生に何を求めているかを示しているとも言えるでしょう。出題者は「筆者の言いたいこと」がつかめているかどうかを問いたいわけですが、その前提となるのは段落の読みです。段落の読みができてはじめて、段落どうしの関係が分かり、論の展開が把握できます。問題の約8割は本文全体の読みの前提となる段落読解を問うているのです。これは、センター試験(共通テスト)に限らず、国公立二次でも私立大でも同様です。
そこからこぼれ落ちる約2割の問題というのは、本文全体の趣旨を問う問題か、難易度の高い問題です。ただし、本文全体の趣旨は段落読解を積み重ねることでたどりつけるものですから、まずは段落の内容を的確に押さえることが求められます。また、難易度の高い問題では解答の根拠が傍線部や空欄から遠く離れていることも多いですが、「合格点を取る」という観点からは、そうした問題に時間を費やすよりも、段落読解で取れる問題を確実に正解する方が先決でしょう(もちろん解法はありますので、難関大を目指す受験生はマスターしてください)。
さて、解答の根拠は傍線部や空欄のある段落内で探すということが分かったところで、入試現代文に関して受験生を悩ます一つの疑問が解決されます。それは、問題は本文をすべて読み終えた後で解くべきか、あるいは、傍線部や空欄が出てくるたびに解いた方がよいのか、ということです。解答の根拠が段落内にある以上、後者に軍配が上がります。傍線部や空欄を含む段落を読み終えたところで、いったん問題を見ましょう。
これは、「国語(現代文)は時間との戦い」という観点からも良策です。限られた時間内で解くために、読み進めながら解くというリズムを身体に染み込ませてください。
※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。