今回からは、傍線部のある問題以外の形式の問題の解き方についてお話していきましょう。まずは、私大型で頻出の空欄補充問題です。
 空欄補充問題も、本文中から解答の根拠を探し出すという点は傍線部問題と変わりません。その範囲も空欄を含む段落内です。ですが、解答の根拠を探す際に留意してほしいことがあります。それは、「空欄を含む語句をカタマリと見る」ということです。
 一つの文というのは、主語(主部)と述語(述部)が骨格としてあり、それに修飾語(修飾部)が付くことで成り立っています。空欄と言っても、前後の語句とは無関係にポツンと存在しているわけではありません。前後の語句とのつながりを踏まえて空欄に入る語句を考えてほしいのです。
 例えば、「(   )が晴れる」とあるとしましょう。空欄は「晴れる」の主語ですね。ですから、空欄には「晴れる」ものしか入りません。すると、候補は「天気」「気分」「疑い」などに絞られます。「近代社会」「象徴」などでは文意が通らないでしょう。このように、空欄だけでなく、空欄を含む語句をカタマリと見て、見当をつけてから解答の根拠を探してください。
 例題を挙げます。

〈問題〉
 人間の使い捨てとは何だろう。それは人間をひとつの実体としてではなく、一個の(   )としてしか考えないような人間の扱いである。たとえば会社の、あるいは家庭の、その他さまざまな人間組織のなかの、一個の役割としてしか人間を考えない恐るべき心性である。そのとき人間は、人間としての役割を捨てて、役割としての人間になってしまうだろう。

問 文中の空欄に入る最も適当な語を、次のア~オから一つ選べ。
 ア 機能  イ 分野  ウ 建築  エ 実体  オ 歴史

 「一個の(   )としてしか考えない」というカタマリで考えましょう。まず、直前に「ではなく」という言葉の〈サイン〉を用いて「ひとつの実体としてではなく」とありますから、空欄に入る語は「実体」と対比されるものと推理できます。
これを踏まえて後ろを読むと、「一個の役割としてしか人間を考えない」とありますね。空欄を含むカタマリと重なることが見て取れるでしょう。つまり、空欄に入るのは「役割」の同義語です。よって、正解はアの「機能」と判定できます。
 本問は、空欄の直後に解答の根拠がありましたので、けっして難しくなかったと思います。しかし、解答の根拠が空欄から離れていたり、選択肢のどの語も空欄に入りそうに思えたりするときこそ、「空欄を含む語句をカタマリと見る」視点は有効です。語句は他の語句とのつながりによって意味を成します。やみくもに空欄に語句を入れてみても、正解にはたどりつきません。前後のつながりを踏まえて考えるようにしてください。
 次回も空欄補充問題の解き方についてお話します。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉で解説しています。