第62回 入試現代文の解き方・⑫逆接の前後にある空欄に注意!
前回は、空欄補充問題の解き方として、「空欄を含む語句をカタマリと見る」ということをお話しました。空欄だけを見て、選択肢の語句を入れてみても、解答を決めることはできません。前後のつながりを踏まえて考えてください。
さて、つながりを踏まえるというとき、空欄の前後にある逆接がヒントになることがよくあります。しかし、ここで注意してほしいのは、逆接があるからといって、前あるいは後と反対の意味の語句が入るとは限らない、ということです。実は、同じ内容が入る場合があり、正答率も低くなります。
どういうことか。簡単な例文で説明しましょう。
〈例文〉
・彼は背が高い。しかし、私は背が低い。
たとえば、「高い」あるいは「低い」が空欄になっている場合は、けっして難しくありません。「高い(低い)」の反対は? と考えればよいわけですから。ところが、「背」が空欄だと、途端に正答率が低くなります。
しかし・ところがなど逆接の接続語は、反対である前後の内容をつなぎます。しかし、反対といってもすべてが反対の要素ではありません。共通の要素がないと反対にならないのです。例文で言えば、「背」という共通の要素があって、「高い」「低い」と対比することができる。「彼は背が高い。しかし、私は年収が低い」では、文意が通りませんね。
逆接の前後にある空欄で難易度が高いのは、この共通の要素を問う場合です。まずは、
空欄を含む語句をカタマリと見て、空欄に入るのが反対の要素なのか共通の要素なのかを見極めてください。
実際の入試問題をご覧いただきましょう。
〈例題〉
金属製のかんざしにも二つの側面がある。一つは、金属のかんざしを、呪術ではなく、美しいものとして飾る心持。これは新しく獲得された感覚だ。しかし同時に、私たちは、意識的にせよ無意識的にせよ、古きもののよみがえりとして、風俗という名の( )表層を提示しているわけだ。
問 文中の空欄に入る最も適当な語を次の中から選べ。
① 感覚的 ② 人工的 ③ 古代的 ④ 近代的 ⑤ 呪術的 ⑥ 感情的
「金属製のかんざし」の「二つの側面」が、逆接の「しかし」を挟んで述べられているわけですね。一つは「美しいものとして飾る心持」という「新しく獲得された感覚」。そしてもう一つが、「古きもののよみがえり」である「風俗という名の( )表層」です。反対の要素は、「新しく獲得」「古きもの」とすでにあります。ということは、空欄には共通の要素があると考えられ、「① 感覚的」が入ると推理できます。正解は①です。「感覚」を共通の要素として、「新しく獲得」と「古きもの」が対比されていることを押さえてください。
今回の解説は、空欄補充問題を解く場合に限りません。逆接が出てきたら、共通の要素と反対の要素を整理して、どの点で何と何が対比されているのかを押さえてください。
※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉で解説しています。