前回は、漢字学習を進めるうえで心がけてほしいことについてお話しました。実際に手を動かすというのはもちろんですが、漢字の意味を理解しながら覚えていくということも、語彙力の強化という面から実践してください。
 さて、今回と次回の2回は、共通テスト国語の漢字問題に絞って、対策と勉強法をお話したいと思います。
 共通テスト国語の第1問(評論)では、センター試験から引き続き問1で漢字問題が出題されています。傍線部と同じ漢字を用いるものを選ばせるという形式です。大部分は傍線部・選択肢ともに二字熟語を構成する漢字のうちの片方が問われますので、たんに漢字力というだけでなく、語彙力も問われていると言えます。
 ところで、この形式で問われる漢字には、ある条件があります。それは、「同じ音の漢字が5つ以上ある」ということです。
例えば、「ケン」と音読みする漢字は、献・顕・検・兼・肩・険・堅・倹などいくつもありますから、「険悪」に傍線を引いた場合、正解の選択肢として「危険」を用意して、残りの4つの選択肢に「献身」「検査」「兼任」「倹約」などを並べれば、問題の完成です。しかし、「険悪」の「悪」の方を問おうとしても、「アク」と音読みする漢字は「悪」のほかに「握」くらいしかありませんので、問題として成立しません(訓読みするものは「空く」「開く」「飽く」などがありますが、音読みと訓読みを選択肢に混在させるのは無理です)。
 このように、傍線部と同じ漢字を用いるものを選ばせるという形式で問うことのできる漢字は、かなり限られています。そして、「カン」「テキ」など、センター試験以来、繰り返し出題されている音の漢字があります。ですから、同音の漢字を整理しておくことは、対策としてかなり有効です。
 『新・ゴロゴ現代文〈漢字〉』では、第8章に「共通テスト漢字・同音異字ベスト70」を設け、同音の漢字を例文・熟語とともに整理してあります。ぜひご活用ください。
 また、共通テスト型の漢字問題では、傍線部が音読みならば選択肢に訓読みを並べ、逆に傍線部が訓読みならば選択肢に音読みを並べるという形で、ある漢字の音読みと訓読みの両方を問うものも見られます。受験生を見ていると、訓読みを苦手としている人が多いようですので、訓読みに焦点をあてた対策も必要でしょう。
 『新・ゴロゴ現代文〈漢字〉』では、第4章に「読みベスト300」を設けています。熟語にしたときに特殊な読みをするもの(「生憎(あいにく)」など)とともに、よく出る訓読みも例文つきで整理していますので、ご活用ください。
 次回は、共通テスト2年目の今年(2022年度)に出題された、新しい形式の漢字問題についてお話したいと思います。