第70回 現代文語彙・テーマの学習法・③対義語をペアにして押さえる
前回は、現代文におけるテーマの学習についてお話しました。「言語」「近代」「日本」など、入試現代文には頻出テーマが確実に存在します。『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』第2章・第3章を読み込んで、理解を確かなものとしてください。
さて、今回は、語彙の学習のしかたについてお話したいと思います。
語彙を覚えていくうえで大切なのは、「対義語をペアにして押さえる」ということです。現代文(評論)では、二つの内容を対比しながら論を進めることがよく見られます。その際に、理解の要となるのが対義語です。対義語の組み合わせがきちんと頭に入っていることで、何と何が対比されているのかが明確につかめます。
例えば、重要語の一つである「普遍」は、〈全てのものに共通して成り立つこと〉という意味ですが、対義語は「特殊」で、〈特定の事物にのみあてはまること〉を意味します。つまり、いつでも・どこでも・誰にでも当てはまるのが「普遍」であるのに対し、特定の時代・特定の場所・特定の人に限られるのが「特殊」なのです。
この「普遍/特殊」という対義語のペアを押さえていれば、以下の例文でも対比の構造が見えてくるでしょう。
〈例文〉
彼ら(=江戸時代の儒学者)の大部分は、中国を理想化し、日本のおくれを強調した。もっと正確にいえば、中国という歴史的・具体的・特殊な文化または国家を、本来、超歴史的・抽象的・普遍的な価値と、同一視する傾向があった。
本来、中国の文化は、特定の場所・特定の時代に成立した「歴史的・具体的・特殊な」ものにすぎません。しかし、江戸時代の儒学者はそれを、場所や時代を超越して通用する「超越的・抽象的・普遍的」なものとみなしたと筆者は言うのです。
この例文で「特殊」「普遍」の前に出てくる「具体」「抽象」も対義語ですね(文章は「具体」と「抽象」の繰り返しによって成り立っているのでした。第46回記事参照)。筆者は対義語を踏まえて文章を書きます。ですから、読み手である私たちも対義語のペアを押さえている必要があるのです。
『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』第4章では、評論に出てくる対義語のペア87組を整理してあります。また、第1章でも「普遍/特殊」「絶対/相対」のように対義語で解説している項目がいくつかあります。まずは、対義語のペアをしっかりと頭に叩き込みましょう。そのうえで、ポイントとなる部分が赤字で説明されていますので、何と何が対比されているのかを理解してください
次回は語彙の学習法についてお話します。