第71回 現代文語彙・テーマの学習法・④言葉どうしの関係を理解する
前回は、語彙の学習法として、「対義語をペアにして押さえる」ということについてお話しました。「普遍/特殊」「絶対/相対」など、評論で登場する対義語を、『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』第4章で整理しておくことで、文章の対比構造が上手くつかめるようになるはずです。
ところで、対義語のペアというのは言葉どうしの関係の一つの形ですが、文章は言葉の組み合わせによって成り立っているわけですから、言葉どうしの関係を理解していることが、読解力の向上にもつながります。
例えば、前回は「普遍/特殊」という対義語を例に挙げて説明しましたが、ここにもう一つ対義語のペアである「絶対/相対」を重ね合わせてみましょう。「絶対」が〈他から独立して存在していること〉という意味であるのに対し、「相対」は〈他との関係において成り立っていること〉という意味です。
では、「普遍」は「絶対」でしょうか? それとも「相対」でしょうか? 「普遍」とは〈全てのものに共通して成り立つこと〉でしたね。いつでも・どこでも・誰にでも当てはまる。つまり、他のものは関係ないのです。だとすれば、「普遍」は「絶対」的なものと言えるのでしょう。これに対して、「特殊」は他のものも存在するわけですから、「相対」的です。このように、〈普遍-絶対〉の組み合わせと〈特殊-相対〉との組み合わせに整理できます。
さらにここに、「主観/客観」という対義語のペアも加えてみましょう。「主観」は〈その人だけの独自の物の見方〉、「客観」は〈誰にでも共通する物の見方〉です。だとすれば、「主観」は〈特殊-相対〉のグループ、「客観」は〈普遍-絶対〉のグループに入りますね。こうして、〈普遍-絶対-客観〉のグループと、〈特殊-相対-主観〉のグループが完成しています。
このような言葉どうしの関係を押さえていることで、文章の極端な読み違いを防ぐことができます。「絶対」と「主観」という語が出てきたときに、「主観」はその人だけの物の見方であって、他の人には別の「主観」があるのだから、「主観」が「絶対」的ということはないなと分かれば、「絶対」と「主観」を同一視せずに済むでしょう(受験生にとっては「主観」が「相対」的であるということの理解が難しいようです)。
言葉どうしの関係は、テーマどうしの関係にも広がっていきます。『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』第1章~第3章では、前の項目の内容を踏まえて新たな内容の説明をしている箇所が多々あります。参照すべき項目に立ち戻りながら、言葉どうし、テーマどうしの関係を理解してください。