前回は、共通テストの現代文に関して、センター試験から引き続いて「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは指示語問題として解く」ことが鉄則中の鉄則であることについて述べました。共通テストも基礎力重視であることに変わりはありません。センターの過去問を活用して、基本事項をしっかりと固めてください。
 さて、今回は、現代文の選択肢の正誤の判定のしかたについてお話したいと思います。選択肢をどう絞っていくか、迷った時にどうやって選ぶか。このあたりの悩みを抱えている受験生は多いでしょう。結局のところ、問題演習を積み重ねてカンドコロを体得するしかありません。しかし、有効な視点というのはあります。
 選択肢の正誤を判定する基準は「本文に書かれている内容であるかどうか」です。しかし、「本文に書かれている内容」であるからといって、すぐさま正しいと判定できるわけではありません。
 どういうことか? 例えば、選択肢にA・Bという2つの要素が含まれているとします。これらはともに「本文に書かれている内容」です。しかし、選択肢で「AだからB」と因果関係で結ばれていたらどうでしょうか? 本文からそのような因果関係を読み取ることができなければ、その選択肢は誤りです。このように、「本文に書かれている内容」ではあっても、因果関係が誤りであるという選択肢の作りが、共通テストでもセンター試験から引き続き見られます。
 例題として、今年度(2022)の第1問問5を取り上げましょう。ここでは、正解の選択肢と典型的な誤りの選択肢を挙げます。

〈例題〉
 【文章Ⅱ】の表現に関する説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
② 豚肉を「あなた」と見立てるとともに、消化酵素と微生物とが協同して食べものを分解する様子を比喩的に表現することで、消化器官の働きを厳密に描いている。
③ 豚肉を「あなた」に見立てるとともに、食べものが消化器官を通過していく状況を擬態語を用いて表現することで、食べることの特殊な仕組みを筋道立てて説明している。
④ 豚肉を「あなた」と二人称で表しながら、比喩を多用して消化過程を表現することで、生きものが他の生物の栄養になるまでの流れを軽妙に説明している。

 全ての選択肢が、「ことで」という表現を用いて前後の内容を因果関係で結びつけていますね。本文がなくとも、②「比喩的に表現する」ことで「厳密に」描かれるとか、③「擬態語を用いて表現する」ことで「筋道立てて説明」することになるとか、ありえませんよね。これらに対して、④は「比喩を多用」することで「軽妙に説明」するという因果関係が成立しており、正解と判定できます。
 因果関係を示す表現は、「ことで」のほか「によって」「ため」などがあります。これらの表現が出てきたら、「本文に書かれている内容か」だけではなく、「因果関係が成り立たつか」という視点から正誤を判定してください。
 次回は、小説に特有の読み方・解き方についてお話します。