前々回・前回と、今年度の共通テスト国語の現代文の問題について見てきました。評論(第1問)にしろ、小説(第2問)にしろ、読解の基本が問われることには変わりありません。文と文のつながりを理解しながら、〈主観的〉にではなく〈客観的〉に読むトレーニングを積み重ねてください。
 さて、共通テストでは国語に限らず〈基本〉が重視されるということでお話していますが、それは古文においても同様です。では、古文における〈基本〉とは何でしょうか? それは、一も二もなく〈文法〉です。そして、共通テストではセンター試験に引き続き〈文法〉がダイレクトに問われています。
 今年度の問題から1問ご覧ください。

〈例題〉
問2 波線部a~dについて、語句と表現に関する説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① a「若からむ」は、「らむ」が現在推量の助動詞であり、断定的に記述することを避けた表現になっている。
② b「さに侍り」は、「侍り」が丁寧語であり、「若き僧」から読み手への敬意を込めた表現になっている。
③ c「まうけたりけるにや」は、「や」が疑問の係助詞であり、文中に作者の想像を挟み込んだ表現になっている。
④ d「今まで付けぬは」は、「ぬ」が強意の助動詞であり、「人々」の驚きを強調した表現になっている。
⑤ e「覚えずなりぬ」は、「なり」が推定の助動詞であり、今後の成り行きを読み手に予想させる表現になっている。

 助動詞を中心に意味が問われていますので、品詞分解しながら丁寧に正誤を判別していきましょう。
①a 「若からむ」を品詞分解すると、形容詞「若し」の未然形「若から」に、推量の助動詞「む」が付いた形ですから、現在推量の「らむ」ではありません。
②b 「侍り」は丁寧の場合と謙譲の場合がありますが、ここでは文脈から丁寧と判別できます。しかし、丁寧の敬意の方向は話し手から聞き手ですので、会話文で登場人物の「若き僧」が話し手の場合、敬意の対象は聞き手の登場人物の誰かとなります。読み手(読者)への敬意となるのは地の文(話し手が筆者)の場合です。
③c 「にや」は古文でよく出てくる形ですが、「あらむ」が省略されており、「~であろうか」と推測を述べるときに用いられます。文法的に説明すると、「に」が断定の助動詞「なり」の連用形、「や」が疑問の係助詞、「あら」が動詞「あり」の連用形、「む」が推量の助動詞です。よって「文中に作者の想像を挟み込んだ表現」は正しいと判定できます。
④d 「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形か、完了(強意)の助動詞「ぬ」の終止形かですが、係助詞「は」が続く場合は、体言が省略されている形ですので、活用形は連体形であり、打消の方です(完了(強調)の場合は「~ぬるは」となります)。
⑤e 「なり」には、動詞「なる」の連用形、断定の助動詞、伝聞・推定の助動詞の3つの場合がありますが、伝聞・推定の場合は補助活用の連体形に接続しますので、「おぼえざるなりぬ」となっていなければなりません。よって「『なり』が推定の助動詞」は誤りです。
 以上のとおり、③が正解と判定できます。
 古文において読解の土台にあるのは〈語彙〉と〈文法〉です。〈語彙〉もセンターから引き続き問1で問われていますし、読解問題でも単語の意味が判別のポイントとなることが多いです。〈語彙〉と〈文法」という両輪を、夏までにしっかりと固めてください。
 次回は漢文について見ていきます。