前回は、共通テスト国語で出題されるようになった、新傾向の問題について見ました。評論文(第1問)で2つの文章が用意されるというのは、今後も続くと思われます。共通点と相違点を読み取るトレーニングを積み重ねてください。
 さて、今回は小説(第2問)について見ていきます。今年度の小説では、最後の問題で本文と関係する資料が用意されました。

〈例題〉
問6 Wさんのクラスでは、本文の理解を深めるために教師から本文と同時代の【資料】が提示された。Wさんは、【資料】を参考に「マツダランプの広告」と本文の「焼けビル」との共通点をふまえて「私」の「飢え」を考察することにし、【構想メモ】を作り、【文章】を書いた。このことについて、後の(ⅰ)(ⅱ)の問いに答えよ。

 本問でも、評論文と同様に、「共通点」の読み取りが求められているのが分かりますね。本文である「飢えの季節」の舞台は、空襲で焼け野原が広がる終戦直後の東京でした。【資料】として用意されたのは、同じく終戦直後に掲載された「マツダランプ」の電球の広告で、その共通点が問われたわけです。Wさんが書いた【文章】をご覧ください。

【文章】
 【資料】のマツダランプの広告は、戦後も物資が不足している社会状況を表している。この広告と「飢えの季節」本文の最後にある「焼けビル」とには共通点がある。[ Ⅰ ]この共通点は、本文の仕事のやり方とも重なる。そのような会長の下で働く「私」自身はこの職にしがみついても苦しい生活を脱する可能性がないと思い、具体的な未来像を持つこともないままに会社を辞めたのである。そこで改めて【資料】を参考に、本文の一文に注目して「私」の「飢え」について考察すると、「かなしくそそり立っていた」という「焼けビル」は、[ Ⅱ ]と捉えることができる。

 「マツダランプの広告」は、戦後も物資が不足しているので消費者に電球を大切に使うよう呼びかけるもので、文言も戦中の広告が利用されていました。つまり、戦争は終わったけれども状況は戦中から引き継がれているのです。そのことは、【文章】に「戦後も物資が不足している」とあることからも分かりますね。それは、国に意向を嵩にかける「本文の会長の仕事のやり方」にも重なります。つまり、本文と【資料】の共通点は戦中からの連続性にあるわけです。
 これを踏まえて、【文章】中の空欄Ⅰ・Ⅱに入る文言を問う問題の、正解の選択肢だけを見てみましょう。

Ⅰ ③ それは、戦時下に存在した事物が、終戦に伴い社会が変化する中においても生き延びているということだ。
Ⅱ ② 「私」にとって解消すべき飢えが継続していることの象徴

 「生き延びている」「継続している」という言葉がポイントです。戦中のことが戦後にも続く、その「共通点」を読み取って答える問題でした。共通テストでは、国語に限らず複数の文章・資料が与えられた問題が増加していますが、共通点は何かを考えながら読み取ることが肝心です。
 次回は古典の新傾向型の問題を見ていきます。