前回は、本文と関係する資料が用いられた、今年度(2023)の小説の問題について見ました。考え方・解き方は、2つの文章が出題された評論文の問題と同じです。共通点・相違点に着目して内容を読み取ってください。
 さて、今回は古典の問題について見ていきましょう。古典でも、共通テストになってから、2つの文章が用意されるようになりました。ここでご覧いただくのは、今年度の古文(第3問)の問4です。本文に関連する文章が用意され、教師と生徒の話し合いの中にある空欄に入る文言が問われました。話し合いの一部をご覧ください。

〈例題〉
(前略)
生徒C――なるほど、句を付けるって簡単なことじゃないんだね。うまく付けられたら楽しそうだけど。
教師――そうですね。それではここで本文の『俊頼髄脳』の3段落で良ぜんが詠んだ「もみぢ葉の」の句について考えてみましょう。
生徒A――この句は【 Y 】。でも、この句はそれだけで完結しているわけじゃなくて、別の人がこれに続く七・七を付けることが求められていたんだ。
生徒B――そうすると、4・5段落の状況もよくわかるよ。【 Z 】ということなんだね。
(後略)

 生徒Cの「なるほど、句を付けるって簡単なことじゃないんだね」という発言は、引用文の内容を踏まえたものです。筆者の源俊頼は掛詞の技巧をこらして句を付けましたが、たしかに簡単ではありません。それを受けて、教師は本文の句について考えようと言っているわけです。【 Y 】は和歌の修辞に関する問題でしたので割愛します。【 Z 】の問題の正解の選択肢のみをご覧いただきましょう。

(ⅲ) 空欄【 Z 】に入る発言として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

③ 殿上人たちは良ぜんの句にその場ですぐに句を付けることができず、時間が経っても池の周りを廻るばかりで、ついにはこの催しの雰囲気をしらけさせたまま帰り、宴を台無しにしてしまった

 引用文では、源俊頼が機転を利かせて句を付けたことで、なんとか場をもたせました。しかし、本文では、誰もうまく句を付けられなかったものですから、場が白けてしまったわけですね。本文と引用文の内容を的確に対比した記述となっており、③が正解と判定できます。生徒Cの「なるほど、句を付けるって簡単なことじゃないんだね」という発言がヒントになっていることをご確認ください。
 第81回の記事から、今年度の共通テスト国語の問題について分析してきました。共通テストではセンター試験を引き継いだ基礎力重視型の問題も出題されており、まずは基本事項を固めることが、国語に限らずどの科目でも求められます。一方で、新傾向型の問題では、複数の文章を重ね合わせてよむことが要求されますから、問題演習が欠かせません。以上のことを頭に入れて、4月からの勉強に臨んでください。