第98回 入試現代文の解法・①指示語は解答に直結する
前回・前々回と2回にわたって、筆者の「言いたいこと」を「見える化」するためのツールである、「攻略アイテム10」について解説してきました。現代文が苦手な人、小さなころからの読書量が不足している人というのは、「日本語の運用のしかた」が身についていないということが多いです。手を動かし、順接や逆接にマークをしていく中で、「日本語の運用のしかた」を体得してください。
さて、本文に記号を書き込み、筆者の「言いたいこと」を捉える必要があるのも、それが問題の解答に直結しているからです。出題者は、筆者の「言いたいこと」と無関係の内容を問おうとはしません。本文の読みを問う以上は、それに関係することを問題にします。ですので、「攻略アイテム10」で「見える化」した部分というのは、解答に直結します。今回からは、「攻略アイテム10」を活かした解法について具体的に紹介したいと思います。
「攻略アイテム10」の中で、最も解答に絡むのが、二重線を引く「6指示語マーク」です。小学生のころから国語の先生には「指示語の内容を押さえながら本文を読み進めましょう」と指導されてきたと思います。言葉と言葉のつながりを把握するうえで基本となるのが指示語です。そして、大学入試の現代文でもそれは変わりません。「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは指示語問題として解く」というのが、鉄則中の鉄則となっています。
センター試験最後となった2020年度の問題を例題としてご覧ください。
〈本文〉
レジリエンスは、複雑なシステムが、変化する環境のなかで自己を維持するために、環境との相互作用を連続的に変化させながら、環境に柔軟に適応していく過程のことである。
レジリエンスがこうした意味での回復力を意味するのであれば、Cそれをミニマルな福祉の基準として提案できる。
問 傍線部C「それをミニマルな福祉の基準として提案できる」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 個人が複雑な現実世界へ主体的に対応できるシステムを・・・
② 個人がさまざまな環境に応じて自己の要求を充足してゆく能力を・・・
③ 個人が環境の変化の影響を受けずに自己のニーズを満たせることを・・・
④ 個人が環境の変化の中で感じたニーズを満たすことを・・・
⑤ 個人が生活を維持するための経済力を持つことを・・・
傍線部Cにある指示語「それ」は「レジリエンス」を指します。「レジリエンス」とは全段落に書かれている「環境に柔軟に適応していく過程」のことであり、それを幅広い指示語の「こうした」で受けているのですから、この内容が解答に関係するのは明らかでしょう。問題の選択肢文は指示語の内容に関わる冒頭の部分のみ書き出しましたが、正解は「さまざまな環境に応じて」とある②で決まります。
次回は、なぜ指示語が問題の解答に直結するのかというお話をしたいと思います。