前回は、〈幅広い指示語〉の働きについて詳しく解説しました。〈幅広い指示語〉は、それまで述べてきた具体的な内容をまとめて主張を提示し、新たな論の展開へとつなげます。段落の終わり、あるいは、次の段落の冒頭に〈幅広い指示語〉が出てきたら、しっかりと内容を整理して読み進めるようにしてください。
 さて、今回は〈幅広い指示語〉が解答に絡む問題を取り上げます。東大の問題です。

〈例題〉
 産業革命以前の大部分の子どもは、学校においてではなく、それぞれの仕事が行われている現場において、親か親代りの大人の仕事の後継者として、その仕事を見習いながら、一人前の大人となった。そこには、同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤がある。それが大人の権威を支える現実的根拠であった。そういった関係をあてにできないところに、近代学校の教師の役割の難しさがあるのではないか。つまり学習の強力な動機づけになるはずの職業共有の意識を子どもに期待できず、また人間にとっていちばんなじみやすい見習いという学習形態を利用しにくい悪条件の下で、何ごとかを教える役割を負わされている、ということである。
問 「それが大人の権威を支える現実的根拠であった」とあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字程度)

 傍線部に指示語の「それ」がありますが、前の文の「先輩と後輩の関係」を受けていますね。「先輩と後輩の関係」が「大人の権威を支える現実的根拠」だと言うのです。しかも、その「関係」を傍線部に続く一文で〈幅広い指示語〉を用いて「そういった関係」とさらに受けています。ですから、「先輩と後輩の関係」とはどのようなものであるのか、前に戻って押さえましょう。
産業革命以前には、子どもは現場で、先輩の「仕事を見習いながら、一人前の大人」となりました。そうした環境においては、「同じ仕事を共有する先輩と後輩の関係」が成立しましたし、仕事ができる先輩(大人)を後輩(子ども)は尊敬の眼差しで見つめたでしょう。それが傍線部で言う「大人の権威を支える現実的根拠」となったと考えられます。
しかし、「そういった関係」をあてにできないところに、「近代学校の教師の役割の難しさ」があります。〈幅広い指示語〉でまとめた後に、新たな論が展開されていることも確認してください。

〈解答例〉
それぞれの仕事が行われる場で、職業を共有する意識を持ちながら、仕事を見習うという形で先輩と後輩の関係が成立していたから。(60字)

 東大だからと言って、とりたてて難しいことが問われているわけでも、特別な読み方・解き方が求められているわけでもありません。現代文は「日本語の運用のしかた」を学ぶ科目です。その中で〈幅広い指示語〉は重要な働きをしているがゆえに、傍線を引いて問うたということなのです。そうした、東大だろうと共通テストだろうと変わらない一貫した読み方・解き方を身につけてください。
 次回は〈幅広い指示語〉と並んで重要な、「ではなく」構文についてお話したいと思います。