これまで、例題を掲載する際に、「選択肢の一部を抜き出す」という方法をとってきました。それは、紙幅の都合上で全てを載せられないという事情もありますが、解答のポイントをより際立たせるという意図も隠されています。選択肢のどこに着目して正誤を判定するのか、全部を見せているとボヤけてしまうので、最初から要点を切り取っているのです。
 しかし、「選択肢というのは、全体を読んで正誤を判定すべきではないか」と考える受験生が多いかと思います。もちろん、その通りです。選択肢の一部分が正しくても、全体が間違っているならば、その選択肢は正解にはなりません。ですから、あるポイントに着目して選択肢を絞っても、最終的には必ず全体を読んで正誤を判定する必要があります。
 ただし、ここで順番を間違えてはいけないのは、先にポイントを絞り、後から全体を見るのであって、全体を先に見るのではない、ということです。共通テストや私大型の問題では、長いものだと選択肢の字数が100字を超えています。それを一気に読み切って、正誤を判定するのは至難の技です。まずは、ポイントを決めて絞っていくのが確実で間違いのない方法であると言えます。
 例えば、第52回の記事で、「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは、指示語問題として解く」という、きわめて頻度の高い〈解法公式〉を紹介しました。本文の内容を踏まえて選択肢全体の正誤を判定するのは、手間がかかりますし、誤読する危険性もあります。しかし、指示語が受ける内容でしたら、必ず直前に書かれているわけですから、確実に押さえることができます。ならば、間違いのないポイントから手をつけていくべきなのです。
 選択肢全体がどんなに良い内容を述べていたとしても、指示語の受ける内容が間違っていたり、その内容に言及されていなかったりしたら、その選択肢が正解になることはありません。なぜならば、指示語の受ける内容を外していては、傍線部の説明にならないからです。全体を判断してから指示語の内容を確認するというのでは二度手間でしょう。先に指示語の内容をチェックして、選択肢を絞るべきなのです。
 整理しましょう。全体として正しい選択肢は、部分的も正しい内容が述べられています。ですから、全体の判定よりも部分の判定を優先すべきです。100字を超える選択肢を漫然と眺めていても、正誤の判定はつきませんから、まずは選択肢をいくつかの要素に区切ってください。そのうえで、それぞれの要素が正しいかどうかを、本文と照らし合わせていくのです。
 実は、特定のポイントに着目して選択肢を絞る方法というのは、古文や漢文でも応用が利きます。第19回の記事で紹介していますので、そちらを参考にしてください。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。