前回まで、現代文における語彙の学習法についてお話してきました。入試現代文、とりわけ評論文では、「抽象」「概念」といった、ふだんの生活では使わない言葉が用いられており、そうした言葉は関連しあって一つの世界を構成しています。対義語や同義語に留意しながら、一つ一つの言葉を丁寧に理解していってください。
 さて、今回からは評論文におけるテーマの話をしていきたいと思います。皆さんの中には、評論文の問題に取り組むにあたって、「読めるときは読めるのだけれども、読めないときには全く手も足も出ない」という悩みを抱えている方が、多いのではないでしょうか? それは、評論文で論じられているテーマというのは、ふだん友人や家族と話す内容ではないからです。友人と「近代」や「言語論」についておしゃべりするなどということはありませんよね。ですから、多少は知っているテーマについて書かれていれば分かるけれども、初めて聞くテーマだとからきしダメ、ということが起こるのです。
 こうした出来不出来のムラをなくすには、評論文で論じられる頻出テーマについて知識を蓄えておくことが肝心です。実は、入試現代文で出題される評論文には、くり返し出される頻出テーマというのが存在します。その理由は、第一に、出題する大学の先生に共通する知識のバックボーンがあるという点です。大学の先生であれば共有している知の体系があり、それに沿って文章は選ばれているのです。そして、理由の第二は、高校を卒業した受験生が読める程度の内容となると、かなり限定されるという点です。専門的で高度な学術論文から出題しても、受験生は誰もできないでしょう。
 先に挙げた「近代」や「言語論」について論じられた文章を、一度は読んだことがあると思います。こうしたテーマは、それらの理由で選ばれているのです。そして、頻出テーマとなっているのです。ですから、頻出テーマの知識を蓄えておけば、何が論じられているかが分かるので、読解の精度が高まりますし、なにより「何を言っているか分からない」ということがなくなります。
 『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』では、第1章の重要語10に続いて、第2章で10の基本テーマについて、第3章で10の発展テーマについて詳しく説明しています。基本テーマで扱われているのは「科学」「身体」など最重要の項目ばかりですから、まずはここをしっかりと理解しましょう。発展テーマでは「記号」「自由」など難関大で問われる内容を扱っていますので、さらに上を目指すためにチャレンジしてください。
 次回からは、「近代」などの頻出テーマが、具体的にどのように論じられているのかについてお話していきたいと思います。