第121回 共通テストの傾向と対策・②指示語がポイントであることは共通テスト現代文 でも変わらない
前回は共通テストの傾向と対策について、総論をお話しました。共通テストでは、文章
を資料を用いた思考力を重視する新傾向の問題が増加していますが、センター試験を踏襲
した基礎力を重視する従来型の問題も一定数出題されています。ですから、センターの過
去問も活用して、基本事項の徹底を図ってください。
今回からは、現代文に絞って傾向と対策を解説していきたいと思います。まずは評論文
です。共通テストに移行して、2つの文章が並べられたり、視覚資料が用いられたりとい
った、センター試験にはなかった出題が見られます。ですが、見かけは変わっても、問わ
れている内容は大きく変わっていません。文と文のつながりを踏まえて、筆者の言いたい
ことを捉えることが、求められているのです。
例えば、共通テスト初年度の2021年度には、次のような問題が出題されました。
〈例題〉
妖怪はそもそも、日常的理解を超えた不可思議な現象に意味を与えようとする民俗的な
心意から生まれたものであった。……このような言わば意味論的な危機に対して、それを
なんとか意味の体系のなかに回収するために生み出された文化的装置が「妖怪」だった。
それは人間が秩序ある意味世界のなかでいきていくうえでの必要性から生み出されたもの
であり、それゆえに切実なリアリティをともなっていた。A民間伝承としての妖怪とは、
そうした存在だったのである。
問 傍線部A「民間伝承としての妖怪」とは、どのような存在か。その説明として最も適
当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① 人間の理解を超えた不可思議な現象に意味を与え日常生活のなかに導き入れる存在。
② 通常の認識や予見が無効となる現象をフィクションの領域においてとらえなおす存在
。
③ 目の前の出来事から予測される未来への不安を意味の体系のなかで認識させる存在。
④ 日常的な因果関係にもとづく意味の体系のリアリティを改めて人間に気づかせる存在
。
⑤ 通常の因果関係の理解では説明できない意味論的な危機を人間の心に生み出す存在。
傍線部の直後にある〈幅広い指示語〉の「そうした」がポイントです。傍線部内やその
前後に指示語がある場合は、その受ける内容を確認するというのが鉄則でした。「そうし
た」は傍線部Aの前の内容を受けています。ですから、「人間の理解を超えた不可思議な
現象に意味を与え」とある①がズバリ正解と判定できます。
指示語の内容を押さえるというのは、文章読解の基本中の基本です。それを共通テスト
はセンターから変わらず問うています。ですので、新しい出題形式という見かけにとらわ
れずに、しっかりと読んで解くということを心がけてください。
次回は小説についてお話します。