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第56回 入試現代文の解き方・⑥〈アンビバレントな心情〉が解答に絡む

 前回は、小説の問題では傍線部自体の言い換えが解答の根拠になるということをお話しました。傍線部にある語句を押さえるというのは評論でも変わりませんが、とりわけ小説の場合、比喩表現や婉曲的な言い回しに注意してください。
 さて、前回の記事の終わりで、取り上げた例題には「小説を読むうえでの重要な視点が隠されている」と述べました。今回はその種明かしをします。それは、小説で描かれる登場人物の心情は〈アンビバレント〉である、ということです。
 〈アンビバレント〉とは、ある一つの物事に対して相反する二つの感情を抱くことで、「両義的」とも言います。人間の心は単純ではありません。嬉しさと悲しさが同居していたり、好意を寄せているのに反発したりと、複雑なものです。小説ではそうした心情の複雑さが繊細に描かれていますから、そのような箇所に注意して本文を読み進めることが肝心ですし、また、そこから読み取られる〈アンビバレントな心情〉は解答に直結します。
 前回の例題をもう一度お読みください。

〈本文〉
 ――その瞬間、彼の母の顔はやさしく微笑んだように見えた。それから彼女は急に彼の上にのしかかるようにしながら、彼の唇の上にそっと接吻をした。彼はその接吻が気味わるくひやりとするだろうと思っていたのに、その唇はまるで生きているように温かかった。――彼は愛情と恐怖とのへんな具合に混ざり合った、世にも不思議な恍惚を感じだしていた。

 屋根裏で石膏の女性の顔を発見した「彼」は、それが亡くなった母の顔に見えます。倒れかかってきた石膏と接吻をすると、「気味わるくひやりとするだろう」と思いきや、「まるで生きているよう」な温かみを感じました。
ここには、屋根裏の薄暗がりの中で石膏の顔が浮かぶという「恐怖」と、亡くなった母に対する「愛情」という、二つの相反する心情が同居していますね。そして、その二つが「へんな具合に混ざり合」い、「不思議な恍惚」を覚えたのです。
 以下に正解の選択肢の全文を掲載します。前回は「恍惚」の語の説明で選択肢を二つに絞りましたが、今回は〈アンビバレントな心情〉の説明になっていることを確認してください。

〈選択肢〉
③ 少年は自分のつくりごとをこえた事態の展開に恐怖感をいだきつつも、そこに出現した母の唇のぬくもりに愛情をよびさまされ、官能をともなった喜びにわれをわすれた。

 「恐怖」と「愛情」という相反する二つの心情が混ざり合い、「官能をともなった喜び(=恍惚)」を覚えるという「彼」の心の動きが、的確に説明されていますね。
 〈アンビバレントな心情〉に着目して解く問題は、今年(2022)の共通テスト小説でも出題されています。小説を読む際の視点として、覚えておいてください。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第55回 入試現代文の解き方・⑤小説では傍線部内に解答の根拠がある

 前回は、センター過去問の分析を踏まえて、傍線部の前後に解答の根拠が集中していること、だから、まずは段落の読みを徹底することが大切であることを、お話しました。「制限時間との戦い」ということも考えたとき、傍線部や空欄が出てくるたびに設問を確認し、読みながら解く姿勢を身につけてください。
 さて、前回の分析は評論でしたが、小説では少し違う結果が出ています。それは、傍線部自体の言い換えが解答の根拠となる問題の割合が、全体の4分の1近くあるということです。
 小説では、登場人物の心情を描くのに、「嬉しかった」「悲しかった」などと直接には表現せず、「顔から火が出た」のように比喩表現を用いたり、「涙はいつしか乾いていた」のように婉曲的な言い回しをしたりします。それゆえ、問題ではそのような箇所に傍線が惹かれるため、傍線部自体が解答の根拠となるのです。
 もちろん、評論でも傍線部の読みは大切、というよりも、それなしには始まりませんが、小説の場合には特に、傍線部内の語句を丁寧に押さえ、選択肢文との対応を意識してください。
 センターの過去問から例題をご覧いただきましょう。

〈本文〉
 ――その瞬間、彼の母の顔はやさしく微笑んだように見えた。それから彼女は急に彼の上にのしかかるようにしながら、彼の唇の上にそっと接吻をした。彼はその接吻が気味わるくひやりとするだろうと思っていたのに、その唇はまるで生きているように温かかった。――彼は愛情と恐怖とのへんな具合に混ざり合った、世にも不思議な恍惚を感じだしていた。

 「彼」は友達と入りこんだ屋根裏の暗がりの中で石膏に彫られた女性の顔を発見しました。「彼」はその顔が亡くなった母に見えました。その時の「彼」の心情を述べた箇所です。ここでは、「恍惚」という語に着目して選択肢の文末の部分を見てください。

〈問題〉
 「彼は愛情と恐怖とのへんな具合に混ざり合った、世にも不思議な恍惚を感じだしていた」とあるが、このときの心の動きの説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① ……愛情がとめどなくあふれてきた。
② ……なつかしさのあまりうっとりとなった。
③ ……官能をともなった喜びにわれをわすれた。
④ ……たとえようのない興奮を覚えた。
⑤ ……超自然の力に驚き感動した。

 「恍惚」とは、心を奪われてうっとりするさま・意識がもうろうとなるさまのことです。この語の意味に合致するのは、②と③ですね。しかし、恐怖感があるのに②のように「なつかしさ」はおかしいでしょう。③のように、愛情と恐怖がまぜこぜになり、「官能をともなった喜び」を覚えたのです。よって、正解は③と確定できます。
 その他の①・④・⑤は「恍惚」の意味を踏まえていないことを確認してください。
 実は、この例題には小説を読むうえでの重要な視点が隠されているのですが、それは次回に解説したいと思います。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第54回 入試現代文の解き方・④解答の根拠を探す範囲は?

 この連載では現在、言葉の〈サイン〉を活用して解答の根拠を見つけ出す〈解法公式〉について解説しています。本文の読みにおいても、問題を解くにあたっても、言葉の〈サイン〉をフル活用してください。
 ところで、解答の根拠は本文中にありますが、ある問題を解くのに本文全体を読み直す必要があるというわけではありません。傍線部や空欄があれば、ほとんどの場合、解答の根拠はその周辺にあります。では、どれくらいの範囲で探せばよいでしょうか?
 過去のセンター評論のすべての問題を分析したところ、解答の根拠は傍線部の前後2行に約5割、前後5~6行に8割近く集中しているというデータが得られました。前後2行というのは大半が指示語の受ける内容です。また、前後5~6行というのは形式段落1段落分にあたります。つまり、段落の内容をきちんと読み取り、そこから解答の根拠を見つけ出せば、8割の問題は解けるということです。
 これは、出題者が受験生に何を求めているかを示しているとも言えるでしょう。出題者は「筆者の言いたいこと」がつかめているかどうかを問いたいわけですが、その前提となるのは段落の読みです。段落の読みができてはじめて、段落どうしの関係が分かり、論の展開が把握できます。問題の約8割は本文全体の読みの前提となる段落読解を問うているのです。これは、センター試験(共通テスト)に限らず、国公立二次でも私立大でも同様です。
 そこからこぼれ落ちる約2割の問題というのは、本文全体の趣旨を問う問題か、難易度の高い問題です。ただし、本文全体の趣旨は段落読解を積み重ねることでたどりつけるものですから、まずは段落の内容を的確に押さえることが求められます。また、難易度の高い問題では解答の根拠が傍線部や空欄から遠く離れていることも多いですが、「合格点を取る」という観点からは、そうした問題に時間を費やすよりも、段落読解で取れる問題を確実に正解する方が先決でしょう(もちろん解法はありますので、難関大を目指す受験生はマスターしてください)。
 さて、解答の根拠は傍線部や空欄のある段落内で探すということが分かったところで、入試現代文に関して受験生を悩ます一つの疑問が解決されます。それは、問題は本文をすべて読み終えた後で解くべきか、あるいは、傍線部や空欄が出てくるたびに解いた方がよいのか、ということです。解答の根拠が段落内にある以上、後者に軍配が上がります。傍線部や空欄を含む段落を読み終えたところで、いったん問題を見ましょう。
 これは、「国語(現代文)は時間との戦い」という観点からも良策です。限られた時間内で解くために、読み進めながら解くというリズムを身体に染み込ませてください。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第53回 入試現代文の解き方・③〈幅広い指示語〉は必ず解答に絡む

 前回は、最も頻度の高い〈解法公式〉として、「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは、指示語問題として解く」を取り上げました。指示語が受ける内容を押さえるというのは、小学校のころから言われていると思いますが、読解の基本中の基本であるので、おろそかにしないでください。入試現代文はきわめて基本に忠実です。
 さて、指示語の中でも特に重要なのが、「このように」「そうした」などの〈幅広い指示語〉でしたね。〈幅広い指示語〉は、そこまでの具体的な内容をまとめ、次の展開へとつなげる働きをしました。ですから、〈幅広い指示語〉の後にはキーワードを含む「筆者のいいたいこと」が述べられており、当然、解答に絡む可能性は高くなります。
 〈幅広い指示語〉が出てきたら、いったん立ち止まって、本文の内容を頭の中で整理するようにしましょう。
 今回も、センター試験から例題をご覧いただきます。

〈本文〉
 ……それは、伝統を単に受けいれて引き継ぐことでもなく、単に拒絶するのでもない。「書くこと」の新たな形での復権が成されるとき、そこに、単なる否定ではない、「近代」の超克が達成できるのではなかろうか。そういう期待をもって活動している作曲家は、「ジャズは好きですか?」という問いに、多分、漠然と「いいえ」とだけ答えてしまうことになるのだ。

 傍線部の一文は、〈幅広い指示語〉である「そういう」で「作曲家」の「期待」についてまとめたうえで、そのような「作曲家」はジャズが好きかという問いに「いいえ」と答えると新たな内容を付け加える、という構造になっています。「期待」であることに着目して「そういう」の内容を押さえると、「新たな形での復権が成される」こと、そして、それにより「『近代』の超克が達成できる」ことです。
 問題は傍線部のように言える理由を問うものでしたが、選択肢は作曲家についての説明の部分のみ載せます。そこだけで正誤が判定できるからです。

〈問題〉
① 急進的な前衛音楽家にとって……
② 音楽を「書き記す」という伝統を洗練させてきた近代西欧の作曲家にとって……
③ 「書くこと」を距離をとって見ることができるようになった作曲家にとって……
④ 書くという伝統を単に受け継ぐだけではなく、拒絶するだけでもない作曲家にとって……
⑤ 「書くこと」に新たな可能性を見いだそうとする作曲家にとって……

 「新たな形での復権」を「新たな可能性」と言い換えた⑤がズバリ正解と判定できます。④も本文にある内容ですが、「~でもなく、~でもない」と否定を重ねているだけで、「期待」の説明になっていません。
 解答の根拠は本文にあるわけですが、やみくもに探しても見つかりません。まずは傍線部にある指示語を、とりわけ〈幅広い指示語〉を手がかりにしてください。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第52回 入試現代文の解き方・②指示語があれば指示語問題として解く

前回は、入試現代文の〈解き方〉の導入として、解答の根拠は本文中に必ずあること、その根拠は「筆者の言いたいこと」に関わる内容であること、だから、言葉の〈サイン〉を手がかりに探せば良いこと、などについてお話しました。解くと言っても前提には本文の読みがありますので、マーク・線引きのトレーニングに励んでください。

さて、今回からは言葉の〈サイン〉を活かした〈解き方〉について具体的に説明していきましょう。『新ゴロゴ現代文』(基礎~必修編)(共通テスト編)では、〈解き方〉のことを〈解法公式〉と呼んで体系的に整理していますが、その〈解法公式〉の中で最も頻度が高いのが次のものです。

「傍線部中、あるいは傍線部の直前に指示語がある場合、まずは、指示語問題として解く」

指示語の受ける内容を押さえながら読み進めていくというのは、現代文読解の基本中の基本ですが、さすがに大学入試ではダイレクトに指示語の受ける内容を問う問題は出題されません。しかし、傍線部中や直前に指示語があって、事実上の指示語問題であるということは多々あります。

もちろん、指示語の受ける内容だけが解答の根拠ではありません。指示語がある以上、それが受ける内容は必ず解答の根拠となります。選択問題の場合、指示語の受ける内容が要素として含まれていない選択肢は、無条件で消去できます。

この〈解法公式〉で解く問題は、センター現代文でくり返し出題されてきました。例題をご覧いただきましょう。

 

〈本文〉

レジリエンスは、複雑なシステムが、変化する環境のなかで自己を維持するために、環境との相互作用を連続的に変化させながら、環境に柔軟に適応していく過程のことである。

レジリエンスがこうした意味での回復力を意味するのであれば、Cそれをミニマルな福祉の基準として提案できる

 

傍線部直前にある幅広い指示語「こうした」で「レジリエンス」についての前段落の内容を受け、さらにその内容を傍線部中の指示語「それ」が受けています。「複雑なシステムが~過程のことである」の一文が解答の根拠となることは間違いありません。

問題は傍線部の内容を問うものでしたが、選択肢の冒頭の部分のみ書き出します。

 

〈問題〉

① 個人が複雑な現実世界へ主体的に対応できるシステムを・・・

② 個人がさまざまな環境に応じて自己の要求を充足してゆく能力を・・・

③ 個人が環境の変化の影響を受けずに自己のニーズを満たせることを・・・

④ 個人が環境の変化の中で感じたニーズを満たすことを・・・

⑤ 個人が生活を維持するための経済力を持つことを・・・

 

指示語の受ける内容に合致しているのは、「さまざまな環境に応じて」とある②しかありませんね。このようにズバリ正解が選べるということは少ないですが、指示語の内容に注目すれば絞り込むことができます。

次回も指示語に関連した〈解法公式〉を取り上げて解説しましょう。

 

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

 

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第51回 入試現代文の解き方・①本文から解答の根拠を見つける

前回まで、10回にわたって、現代文の読み方について、「ではなく」などの言葉の〈サイン〉に注目して、「筆者の言いたいこと」をつかむ方法を解説してきました。方法を理解したら、あとは実戦的なトレーニングあるのみです。学校や塾・予備校の授業で扱った文章を用いて、マーク・線引きする練習を積み重ねてください。
さて、今回からは〈解き方〉へと話を進めていきたいと思います。〈読み方〉を身につけたら、次はその読みを問題を解く段階で活かすことです。勘やフィーリングに頼らずに、確実に問題が解けるようになりましょう。
ところで、問題を解くということに関して、国語の先生は口をそろえて「本文から解答の根拠を見つけ出して答えなさい」と言いますよね。入試現代文はこれがすべてと言っても過言ではありません。その証拠に、問題の冒頭には、「次の文章を読んで、後の問いに答えなさい」と書かれています。与えられた文章の中に、解答に必要なすべてがある。この点は、前提となる知識が求められる他の科目との決定的な違いです。
現代文が苦手な受験生というのは、「これはこういうことだろう」と勝手に解釈して、間違えます。現代文で求められるのは、アナタの主観的な考えではありません。文章を客観的に読み、それをもとに問題を的確に解くことなのです。だいたい、受験生がそれぞれに自分の考えを述べていたら、正解は決められないではないですか。
ですから、解答の根拠は本文中に必ずあるということが大前提ですが、では、どのようにしてその解答の根拠を見つけ出せばよいのでしょうか? その答えはハッキリしています。〈読み方〉で身につけた言葉の〈サイン〉を手がかりとするのです。
出題者の立場から考えてみましょう。どのようなところに傍線を引き、問題を作成するでしょうか? 受験生に求めているのは、「筆者の言いたいこと」を的確に押さえることです。ならば、「筆者の言いたいこと」が解答の根拠となることは明らかでしょう。そこから外れた内容で問題を作るというようなことはまずありません。
「AではなくB」の構文では「筆者の言いたいこと」はBにあるのですから、解答の根拠となるのはもちろんBです。幅広い指示語「このような」の後にはそこまでの内容をまとめたキーワードが来ますから、もちろん解答に直結します。このように、言葉の〈サイン〉を活かして、解答の根拠を見つけ出してほしいのです。
次回からは問題の解き方を具体的に説明していきましょう。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第50回 入試現代文入門・⑩マーク・線引きで「筆者の言いたいこと」を〈見える化〉する。

 第41回の記事から、「筆者の言いたいこと」をつかむための言葉の〈サイン〉について解説してきました。言葉の〈サイン〉は日本語の自然な「型」に即したものですので、けっして裏切られません。本文の内容から入ろうとすると読み間違えますので、〈サイン〉から内容に分け入ることが肝心です。
 そして、〈サイン〉や「筆者の言いたいこと」には、マーク・線引きしていきましょう。とにかく、入試現代文は時間との戦いです。限られた試験時間の中で問題に答えるために、自分が読んだ痕跡を残しておいてください。自分で手を動かしてマーク・線引きすることで、「筆者の言いたいこと」が〈見える化〉していくというのは、とても楽しい作業ですよ。
 さて、今回は締めくくりとして、第44回の記事で取り上げた例文の続きに出てくる文章をご覧いただきましょう。貨幣と言葉にはアナロジー(相同性)があり、そこに文化の本質を探る鍵があるとのことでしたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

 貨幣と言葉に共通して見出される本質としての関係とは、「〈物〉を生み出す関係」、つまりは存立的関係のことである。たとえば、〈自我と他者の関係〉がその典型と言えるであろう。あらかじめ確固たるアイデンティティを持った自我と他者が実体的に存在しているのではない。両者は関係によってはじめて生ずるのである。

 「~とは」「つまり」「たとえば」「ではない」と、これまで見てきた言葉の〈サイン〉が目白押しですね。それだけでもこの箇所が「筆者の言いたいこと」に関わると見当がつきます。
「貨幣と言葉に共通して見出される本質としての関係」とは、「存立的関係」とのことです。どういうことでしょうか? 筆者は自我と他者を例に説明しています。私は他者との関係において存在しているのであって、先に私が存在しているわけではありません。同様に、貨幣の価値は商品との関係によって決まりますし、言葉の意味も他の言葉との関係から決まります。それが「存立的関係」ということであって、筆者はそこに「(文化の)本質としての関係」を見出しているわけです。
 以上の内容を線引き・マークして押さえれば、センターで出題された次の問題の正解の選択肢を選ぶことは難しくありません。

問 「二つの本質」とあるが、それはどのようなことか、その説明として最も適当なものを選べ。

① 言葉も貨幣も、価値は〈関係〉から成り立っており、しかもその関係は存立的関係をもって本質とするということ。

 「存立的関係」というキーワードが含まれていますので、ズバリ選べるはずです。
 入試現代文入門として10回にわたってお話した内容は、本当に基礎の基礎ですが、頂上につながる基礎でもあります。言葉の〈サイン〉を武器に、ぜひ現代文の頂点を極めてください。

※この記事の内容について、詳しくは『新ゴロゴ現代文』〈基礎~必修編〉〈共通テスト編〉で解説しています。

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第49回 入試現代文入門・⑨定義の「とは」

 前回は、〈幅広い指示語〉の中でも、「このような」「そういう」などの短い語句でまとめるものについて解説しました。まとめられたその短い語句には前で述べられていた内容が凝縮されているので、本文におけるキーワードと捉えられるということでしたね。キーワードもやみくもに探し出すのではなく、日本語の「型」に沿って見当をつけることが肝心です。

 さて、今回は、これらの〈幅広い指示語〉と同様に、キーワードであることを示す言葉の〈サイン〉を紹介しましょう。それは、「~とは」です。
 「~とは」という表現は、言葉の定義をするときに用いますね。評論文で定義をするというのは、筆者にとってそれくらい重要であるということを意味します。ですから、「~とは」の形で定義されている語句はキーワードであるとみなせます。その語句を丸囲みし、右肩に+マークを付けるとともに、「~とは」以降に書かれている部分にも線引きして、定義の内容をしっかりと押さえてください。
 近年の入試問題から例文をご覧いただきましょう。

 リスクとは、何事かを選択したときに、それに伴って生じると認知された――不確実な――損害のことなのである。それゆえ、地震や旱魃のような天災、突然外から襲ってくる敵、(民衆にとっての)暴政などは、リスクではない。それらは、自らの選択の帰結とは認識されていないからである。(大澤真幸『不可能性の時代』)

 冒頭で「リスク」の語が定義されていますね。筆者によれば、リスクとは選択によって生じた不確実な存在のことです。ですから、自ら選んだわけではない天災や敵の襲来は、リスクには当たりませんね(民主主義の社会では自ら選んだ為政者による「暴政」はリスクですが、ここでは前近代の独裁政治の話をしています)。
 「リスク」の定義を押さえていれば、次の問題はけっして難しくないでしょう。

問 「たとえば自然災害の脅威は、リスクではないのか? そうではない」とあるが、筆者がそう述べているのはなぜか。最も適切なものを選べ。

① 自然災害を最新の科学の力によって完全に予防しようとしても無駄なことであるから。
② 伝統社会では宗教的な観点から自然災害を自らへの罰として受け入れざるを得なかったから。
③ 仮に被害が甚大だったとしても自然災害は選択の結果として生じるものとはいえないから。
④ 高層建築が少ない伝統社会では自然災害が起こっても現代ほど大きな損害は生じなかったから。

 「選択の結果として生じるものとはいえない」と、「リスク」の定義に即して理由を述べている③が、ズバリ正解と判定できますね。
 「本文に解答の根拠を求める」と言っても、本文全体が根拠になるわけではありません。解答の根拠となるのは「筆者の言いたいこと」にあたる部分です。そして、それは言葉の〈サイン〉によって見つけ出すことができます。言葉の〈サイン〉に着目した読み方・解き方を、自分のものとしてください。

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第48回 入試現代文入門・⑧キーワードを示す言葉の〈サイン〉

 前回は、具体から抽象への転換点に置かれる〈幅広い指示語〉について解説しました。「このように」「そういう」などの〈幅の広い指示語〉は、段落の終わりや次の段落の冒頭に置かれ、そこまで述べてきた(具体的な内容)をまとめるとともに、新たな論の展開を示唆するものでした。〈幅広い指示語〉が出てきたら、いったんそこまでの内容を整理し、次の内容に備えるという、メリハリのある読み方を心がけてください。
 ところで、〈幅広い指示語〉は2種類に分けられます。1つめは、「このように」「こうして」など。これらは、「このように~である。」のように、文の形で前の内容をまとめます。もう1つは、「このような」「そういう」など。これらは、「このような○○は」のように、語や短い語句の形でまとめます。
 今回取り上げるのは後者です。「このような」「そういう」などの〈幅広い指示語〉でまとめられる語や短い語句は、そこまでの内容が凝縮されているわけですから、本文におけるキーワードと捉えられます。ですので、丸囲みをし、右肩に+マークをつけて、目に見えるようにしましょう。キーワードは解答に直結します。
 センターの過去問から例文をご覧ください。

 このような音楽の筆記性は、一九五〇年代の前衛音楽でほぼ飽和状態にまで達した――少なくとも、多くの音楽家たちはそう実感していた。そして、一九六〇年代後期には、そうした筆記性の飽和への反動として、非筆記的な即興演奏へと向かう動きが、突然、急進的な前衛音楽家たちの間に広がり始める。そうした即興演奏とは、正に、演奏する奏者同士の間で行われる音響を媒介とした口述的コミュニケーションを主眼とした音楽である。(近藤譲『「書くこと」の衰退』)

 「このような」「そうした」「そうした」と〈幅広い指示語〉が連発していますが、注目してほしいのは最後の「そうした」です。「即興演奏」というキーワードが示されています。楽譜を書いて作曲するという「筆記性」から、奏者同士のやり取りでその場で作り出す「即興演奏」への転換を、筆者は指摘しているわけです。
 この箇所を解答の根拠とした問題と、その正解の選択肢のみをご覧ください。

問 「音楽は、『無名性』を獲得するのだ」とあるが、それは具体的にどういうことか。最も適当なものを選べ。

① 音楽が、ある特定の人間の作品であることから解放され、演奏者たちが演奏の現場で共同して作り出す作品として存在するということ。

 楽譜に書かれた楽曲はベートーベンなど「特定の人間」が作曲者ですが、その場で作り出される即興演奏にそのような作曲者はいません。だから「無名性」と言えるのです。
 「キーワードを押さえながら読もう」とはよく言われることですが、キーワードもまた言葉の〈サイン〉を手がかりに見つけ出すことができます。内容の前に「型」から入るということを意識してください。

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第47回 入試現代文入門・⑦〈幅広い指示語〉

 前回は、(具体的な内容)の始まりを示す言葉の〈サイン〉である「とたえば」を取り上げながら、評論文は具体と抽象のくり返しによって成り立っていること、そして、筆者の主張は〈抽象化された内容〉の方にあることを解説しました。「たとえば」「つまり」などの言葉の〈サイン〉に着目することで、具体の部分と抽象の部分をしっかりと見極め、「筆者の言いたいこと」を的確に押さえてください。
 さて、「たとえば」や「つまり」は具体と抽象の転換点を示す役割を果たしているわけですが、そのような働きをする言葉の〈サイン〉がもう1つあります。それが、今回取り上げる「このように」「そういう」などの指示語です。
 これらの指示語は、「これ」「その」などが単語や短い語句のみを受けるのに対して、一文や段落全体の内容を幅広く受けるので、〈幅広い指示語〉と呼ぶことにします。
 たとえば、発表などをするときに、それまで述べてきた内容をまとめるところで、「このように~です」と言いますね。評論文でも同様で、〈幅広い指示語〉は段落の終わりや段落の冒頭に置かれて、具体例などをまとめて要約する働きをします。(具体的な内容)から〈抽象化された内容〉に論が進んでいくことを示すわけです。
 今回も、入試現代文で最頻出の筆者の一人である鷲田清一の文章から例文を取りましょう。

 わたしたちは行為の最中に「いま」と言うより、行為がまだ完了していないとき、もしくはすでに完了してしまっているときに、「いま」という言葉を使いがちだと、中島(義道)は指摘する。「いま」という言葉には、だれかに向けて同じ「いま」の幅を共有することへの呼びかけが含まれているというわけだ。
 過去と現在がこのように言葉によって「制作」されるとしたら、未来はどうだろう。未来もまた言語的に、とまでは言わなくても「意味」によって、「制作」されるのだろうか。

 たしかに、先ほど会っていたのに、「いま○○さんと会っていたよ」と言いますね。それは、○○さんの話題を話しかけた相手と「共有」するためです。そのようにして「いま」の幅は過去へと広がっていきます。例文では、この(具体的な内容)を次の段落で〈幅広い指示語〉の「このように」で受け、過去と現在は言葉によって「制作」されるとまとめています。
 ところで、文章の途中でなぜまとめをするのでしょうか? それは、見方を変えたり、新しい話題を提示したりと、論を先に進めていくためです。例文でも、「未来はどうだろうか」と、新たな問題提起がされていますね。ですから、〈幅広い指示語〉が出てきたら、そこまでの内容をいったん整理し、次なる内容に備えるといった心構えで、読み進めるようにしてください。それが、「メリハリをつけて読む」ということです。
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