センター試験の平均点は55~60%程度です。標準偏差が約20%なので、得点率80%以内に約90%の人(約45万人)が収まる計算です。しかし、国公立・私立上位大の合格には80%以上の得点が必要なので、本当の勝負は得点率80%以上の、残り10%の人たち(約5万人)の間での勝負だということになります。

今の時代、大学が二極化してきています。上位5%の大学に受験生の50%近くが出願しているのです。その意味で、80%までの得点の取り方と、80%を超えたところでの得点の取り方とはまるで違うものなのです。

たとえば、今平均点である60%程度の得点率の科目があるとしたら、それを80%までもっていくのは単純に「量の勉強」で届くものが大半です。

英語なら単語・文法を覚え、長文問題を一日2題解く、というようなことをひたすらやれば、「英語に慣れる」ことにおいて80%の得点が取れるようなります。また数学なら、ⅠA・ⅡB分野の典型問題をそれぞれ200題ずつくらい暗記(パターン化)すれば、これも80%までは届くでしょう。

しかし、90%を狙うとなると「質の勉強」が絡んできたり、「本番強さ」「詰めのきびしさ」など、他の要因が絡んできたりします。

ここで問題なのは、すべての科目を平均して80%とることはなかなか困難である、という現実です。「量の勉強」の難しいところは、センター試験までに時間が足りず、結果的に間に合わない、ということです。そうなると平均して80%をとるためには、得意科目は90%を狙い、苦手科目はなんとか70%をキープするという「戦略」が必要になってきます。

前々から言っているように、苦手科目に関しては早めの対策で克服し、センターで最低70%をとれるように計画・実行しましょう。また、得意科目は貪欲に90%~100%を目指すべく、合格大作戦を展開します。

ちなみに、「二次試験対策をしていればセンター試験は得点できる。大は小を兼ねるのだ」という考え方をする人がいますが、現実はそんなに単純なものではありません。
センターはセンターでちゃんと対策をしなければ得点できないような試験になっています。

ここで経営の神様と言われた松下幸之助の言葉を紹介します。

「一方では『これで十分だ』と考えるが、もう一方は『まだ足りないかもしれない』と考える。そうしたいわば紙一重の差が、大きな成果の違いを生む」。

ギリギリのところでの紙一重の差が合否を分けるという話はもう何度もしてきましたが、それは実際に試験を受けてみるとより一層はっきりします。

例えばセンターの得点率80%が合否のボーダーの大学の場合、センター得点率77.5%では5人に1人しか合格しないのに対して、82.5%の生徒では5人中3人以上が合格するというデータが出ています。

多くの国公立大学には二次試験があり、そこで逆転することは可能ですが、センター試験の得点率と最終的な合格率は見事に比例しているのです。

センターと二次の比率が1対4で、圧倒的に二次勝負と言われる東大ですら、センター試験の得点と合格率とが見事に比例しているのです。これはみんなに真剣に受け止めてもらいたい事実です。

東大文Iの場合、センターの得点率が82.5%だと合格率はわずか5%、85%だと合格率は10%、87.5%だと合格率は40%に跳ね上がり、90%だと合格率は55%、92.5%だと合格率は90%近くにも達します。

センターと二次の比率は1対4なのですから、ここまで顕著にセンターの得点率と合否が比例しなくてもよさそうなものですが、センターの得点率が80%を超えてくると、わずか2.5%の差は予想以上に重く、結果へと結びつくのです。

現代文ならば漢字一つが2点、小説の語句が3点、古文なら単語一つが5点、漢文なら漢字の読み・意味が4点。これらをきちんとこなすことで200満点中14点アップ、つまり国語全体の7%もの得点率を占めているわけです。

もちろん読解問題は一問8点前後の得点があり、一問で4%得点率を持つわけなので、それらを得点することが大切なのは言うまでもありません。本末転倒して、得点の小さなものだけをとることに時間を割く必要はありません。しかし、80%以上の得点率を目指す場合は、小さなものの積み上げが効いてくるということをしっかり理解して残りの日々を勉強してください。