第二章「赤本で逆転の戦術を練る!」編

●非公表の「合格最低点」は予備校の周辺から集める!
志望大学の合格最低点はぜひとも入手したい重要データである。非公表の大学も多いが一部の予備校ではかなり正確な合格最低点の推定値を持っていることがあるので、こうした情報をいち早くキャッチする能力も、身につけたい。

●合格最低点から読み取るもの
一般に合格最低点は毎年大きく変動しない。大学によって合格最低点の高い、低いといった傾向もハッキリしている。具体的には①「低い=5割前後」、②「普通=6割前後」、③「高い=7割前後」の3つに分けられる。①は科目数の多い国公立大によく見られるタイプ。②は難関私大の多くの学部がこのタイプである。③は問題がやさしめか、医学部のようにレベルの高い受験生同士の少数激戦となるときのパターン。ただし気をつけてほしいのが、合格最低点を素点ではなく偏差値で発表している大学があることだ。偏差値を素点と勘違いして60%取れば合格だ、と思っていたら素点では75%必要だった! ということが多々あるので十分に注意して欲しい。

①ズバリ苦手科目を捨てて、得意科目を伸ばして合格最低点をクリアーする。三科目受験であれば、二科目で大きく得点できれば、苦手科目は十分カバーできる。

②私大は、科目数が少ないので苦手科目を作ってはダメだ。現実的な攻略法はまず、「英語を7割ラインまで持っていくことを最優先課題に掲げる」。難関大は英語の配点が他科目よりも高い場合が多い。残った国語、選択科目は「しのぎ科目(5~6割目標)」と「勝負科目(7~8割目標)」に振り分けて、どちらか一つにより多くの時間をかける。基本は3戦全勝、ダメでも2勝1分を狙おう。

③合格最低点が70パーセントなら、プラスマイナス15パーセントの範囲で、各科目の目標得点を設定する。合格最低点が高い大学はかなりギリギリの点での勝負になるので、1点をおろそかにしない勉強をすることも大切になる。早稲田などは合格得点が75%以上になる年も珍しくなく、1点に100人程度重なる場合がある。漢字や文学史一問で合否が分かれることなど日常茶飯事のことだ。自分の実力を客観的に判断しながら、そのつど勉強計画を柔軟に軌道修正していく能力が必要である。

●センター試験の目標得点
国公立志望者はセンター試験の目標得点を設定する。センター試験で何点取ればいいかという目安は、「蛍雪時代」の付録や「全国大学案内」の「国公立入試難易ランキング」のページにまとめられている。これらのランクは、予備校によって表示の仕方や数値に違いがあり、おおむね高めに記されていることは知っておこう。

○二次試験重視型の大学の対策
二次試験重視の大学を目指す場合、センター試験では90%前後を一つの目標として、それ以上の得点を取ることにあまり時間を割かないほうがよい。センター試験は80%までは楽に得点率を伸ばすことができるが、80%を超えて90%を目指すとなるととたんにコストパフォーマンスが落ちるからである。残された少ない時間で逆転を狙うなら、センター試験は足きりを逃れる程度の目標得点でよしとし、二次試験対策に多くの時間を回したほうが合格の可能性が高まる。

○一対一前後の比率の大学の対策
センター試験と二次試験の配点比率がほぼ同等の場合、センター試験での失敗を二次試験で挽回しにくくなる。よって、センター試験の目標得点は、合格者平均を目標とし、二次重視の大学よりも少し厳しめに設定したほうがよい。

○センター重視型の大学の対策
センターと二次試験の配点比率が2対1以上の大学の場合は、センター試験で逃げ切る戦術を取る。一般的にセンター試験重視の大学の二次試験は「英語のみ」や「面接・小論文」など、負担はかなり軽い。二次試験で逆転、という発想は捨てて、センター試験で逃げ切る戦術がよい。目標は「入試難易ランキング」で公表された点数の一割上を目標得点としよう。

●センターの目標得点が設定できたら
センター試験の全体の目標得点を設定したら、これを各科目に分配する。分配は、「得意・不得意科目」「科目にかけられる時間」を総合的に判断し、無理のない程度で設定する。まず、2年分のセンター試験の過去問を解いてみて、現時点での得点を把握すること。あと何点足りないのかを数字でしっかりと自覚することで、今後やるべき課題が見えてくるはずだ。

●二次試験の目標得点が設定できたら
国公立の二次試験(私立では本試験とする)の目標は、前年度の合格最低点に5~10点上乗せした点数を目標得点とするのがよい。国公立は科目数や問題の難易度にバラつきがあるので、大学によって合格最低点には幅ができる。配点の高い科目や、難易度の高い科目の場合は、50~55%、標準的ならば60~65%を目標とするとよいだろう。また、科目数が多いほど合格最低点は低めになる傾向なので、このあたりは赤本を分析して、おおまかな目標得点を割合で出すこと。
私立の場合は、60~70%のラインが一般的だ。不明な場合は65%を目標にしておくとよいだろう。ただし、問題が易しめの場合は70%のラインに設定する。

●それぞれの目標得点が設定できたら
目標得点が設定できたら、次はそれぞれの科目に割り振る。その場合に注意することは、3つ。

①問題の難度が高い場合は、80%以上の無理な設定をしないこと。
②苦手科目も80%以上の無理な設定をしないこと。
③英語はどんなに苦手でも、60%ラインを目標とすること。

とくに大切なのは、③だ。私立など英語の配点が高いところでは、英語が60%に達しないと、選択科目と国語が80%以上必要となり、かなりの負担がかかってしまうので、最低でも60%を目標にすること。
科目ごとに割り振る際に、「得意科目(自分にとって易しい)」「勝負科目(高得点を狙う)」「苦手科目(自分にとって難しい)」「しのぎ科目(足を引っ張らない程度)」「抑え科目(合格最低点付近を狙う)」に分類し、それぞれの科目の役割を与えて考えるといいだろう。
「勝負」「抑え」「しのぎ」の科目にどれだけの得点を配分するかは、受ける大学・学部の合格最低点の高さや配点によって変わってくるが、たとえば3科目受験の私立で、配点がすべて同じで合格最低点の得点率が60%なら、勝負科目80%、抑え科目60%、苦手科目40%という設定も可能である。