前回は、入試現代文における語彙の学習の必要性についてお話しました。評論文では
、「普遍」「概念」などふだんの生活では用いない術語が使用されています。ですから、
英単語や古文単語と同じように現代文でも語彙の習得が求められるのです。〈日本語の運
用のしかた〉に基づく読解力と、言葉の意味に強くなる語彙力が、現代文の両輪であると
考えて勉強に励んでください。
 それでは、どのようにして言葉を覚えていけば良いのでしょうか? 今回は、語彙の学
習のしかたについて説明したいと思います。
 言葉の意味を効率よく覚えていくために、まず最初に押さえてほしいのが、対義語です
。反対の意味を持つ語をセットにすることで、理解が深まりますし、何より実際に文章を
読んでいく際に大きな力を発揮します。
 例えば、現代文の読み方・解き方を解説してきたこれまでの記事で、「具体」「抽象」
の語をたびたび用いてきました。「具体」は〈目に見える形やものとして存在すること
〉、これに対して「抽象」は〈具体的なものから共通する要素を取り出して、頭の中でま
とめること〉です。両者は対義語の関係にあります。具体的なイワシ・サバ・マグロを抽
象化すると魚、具体的なジャガイモ・キャベツ・トマトを抽象化すると具体です。
 もちろん、評論文ではより高度な内容が論じられていますが、具体と抽象の関係に変わ
りはありません。文章は、具体と抽象のくり返しによって成り立っているのでした。そし
て、筆者の〈言いたいこと〉に関わるのは抽象の方です。具体がそのものしか指し示さな
いのに対し、抽象はさまざまなものをまとめて言うことができるからです。このように
、「具体」と「抽象」を対義語として押さえると、文章の構造が見えてきます。
 対義語としては、そのほかにも「普遍」「特殊」、「本質」「現象」など、評論文で頻
出の重要語が目白押しです。まずは、対義語のペアとして覚えるところからはじめましょ
う。というのも、文章の中に「普遍」と「特殊」の語が出てきても、それを知らなければ
対義語であることに気づかないからです。逆に、対義語であることが分かっていれば、そ
の2つの内容を対比させて読むことができます。
(ちなみに、「普遍」は〈すべてのものに共通して成り立つこと〉、「特殊」は〈特定の
事物にのみあてはまること〉です。「本質」「現象」は自分で調べてください。)
 『新ゴロゴ現代文〈語彙・テーマ〉』では、第4章で87組の対義語を整理しています。
現時点での自分の語彙力を診断するという意味でも、まずはここから着手してください。
 次回は、言葉どうしの関係に注目して覚えていく方法についてお話します。